スタンドバイミーレッド
スタンド・バイ・ミー
スティーヴン・キングによる同名の小説。1986年に描かれたアメリカ合衆国の青春ドラマ映画。
内容は1950年代末のオレゴン州の小さな町キャッスルロックに住む4人の少年たちが好奇心から、線路づたいに“死体探し”の旅に出るという、ひと夏の冒険を描いてたもの。
青春映画の傑作、金字塔と名高い『スタンド・バイ・ミー』を電車の先頭車両に乗る時、いつもその物語が頭に浮かぶ。席に座らず、壁沿いに背中を預けて運転手と同じ方角を眺める。
線路の上を突き進む車輪の箱はいつだって私を未開にさせる。
置き去りにしていく景色なんてどうでもよく、彼らが歩いた道なりに酷似した意味のない線路を眺め続ける。それだけが何よりの時の流れだった。
「死体を探しに行こう」
なんて言い出した友達は青春の象徴をなんとなしに言葉にしただけで、別段突然登校しなくなった友達を探しに行くなんてことはない。不登校は家にいて、私たちはここにいる。友達は青春として死体探しを口にしただけだ。
「死体探しって映画のアレか?」
突拍子ないセリフに反応したのは、そのシーンが有名だからに他ならず、線路の遥へ突き進む感覚すら彼らは知らない。
「そうそう!線路の上歩いてどっかこうー誰もいないようなとこにさ!」
「でもそれってなんか規則に引っかかるだろ?」
「夜中に田舎とかでやれば大丈夫だって!見つかるわけないよ!」
「確かにな」
「やろ!めっちゃ青春ぽいじゃん!」
「確かに面白そうだな!」
「でしょでしょ!」
「ナニソレ面白そう!あたしらもやーる」
「オレもオレも」
なんて話が膨らみ、一夏の一思いの青春が企画されていく。馬鹿みたいに盛り上がって、馬鹿みたいに笑って、馬鹿みたいに楽しむ。
決してできやしないことをさも若気の至りと、妄想を膨らませる。
だけど、彼らは知らない。
先頭車両から見る、線路を突き進むその先も、どこかへ連れ去られるような感覚も。
そして、“死体”探しの意味さえも。
だから敢えて私だけが真実を告げよう。
死体という存在と青春の価値、そして想像の起点を。
夏明るき教室の端、人のいない冷却と忘却を纏った紅いそこ。
ひとつ、誰もいない机に飾られるは花。
無意味な色は紅く、それはいずれ枯れていく。
息の数と涙の数が少ない合わないその終焉。
私は線路を歩いてやって来た。
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