22. 奇襲

「あ、あ、あ、あ、あ…」

 腹式発声。正式に未だ出ず。

「もっと腹から声を出すっ!!」

 触っていいって許可出してませんけど。

「おなかから声出して…」

 耳元で言うの、ナシですってば。

「出してますってばっ!!…って、えぇっ?!」

 同じ顔がフタツあるっ?!

「憶えてない」

「みたいな顔してるね…?」

 記憶にない…。

「すみません…」

 多分、どこかでお会いしているかと思いますが。

「じゃあ、思い出すまで腹式の練習しよう♪」

「そうしよう♪」

 その笑顔で、思い出した。

ひなキョー」

 合唱部の部長と副部長。

 どっちがどっちかわかんないから『雛田ひなたキョーダイ』略して『雛キョー』

「複数形にするな」

「複数形にしない」

 相変わらず、息が合ってる。

「ご用件は?」

 用件があるから、わざわざ創作研究会まで来てくれたんでしょ?と思い、首を傾げた。

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