10. 筆が進まぬ

「チッ」

 書く気はあるが、筆が進まぬ。

「はぁ…」

 面倒なことになったなぁ。

 書くには丁度いいけどさぁ…。

 友達からの告白とかマジないわ。

「ないわぁー」

 と、叫んで、ふと気配がした扉の方を見ると、

「教室で告白はないよなぁ…」

 現実に戻された。

 こんな時に、羽佐はさが来るとは。

「たまたま遭遇しただけだよ?」

「声、掛けてよ…」

「お邪魔しちゃ悪いかなって思ったから、ね」

「全然、お邪魔じゃないよっ」

 むしろ、声を掛けて欲しかった…。

「それに、れんちゃんの困った顔を見るのが、大好きだもんっ」

 生粋ドSのいい餌食になってしまいそうだから、話題を変える。

「昨日のライブ、楽しかったよ。ありがとう」

「こちらこそっ!!」

 羽佐は再び顔を緩めて、

「目の前で、チュッって…」

 喋らなければ、普通にカッコいい彼は古江ふるえの所属してるバンドのドラム担当。類は呼んでしまうのだろうか…。

「いやぁ、あの時の顔、よかった…」

 しまった。

 かなりの妄想材料を渡してしまった気がする。

「それでね。やっぱり蓮ちゃんが欲しい」

 断ろうか?

「俺だけじゃないよ。特に、古江さんがやる気になってるから」

 やっぱり、断ろうか??

「このバンドで、ずっとやっていけたら最高だと思って…」

 聞こえるか聞こえないかわかんない声で、本音が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る