6. 反抗期。

「遅い」

「ですよねぇ」

 校門の前で、仁王立ちしている長身で細身の黒髪が特徴のイケメンは、私の幼なじみであり、これからサポートで参加するバンド「WEDGE」のベーシストでもある。

れんちゃん、会いたかったぁ」

「あ。はい…」

 思わず棒読みにもなるよ。そのオネエ口調。全国のオネエに謝れ。と言いたげに、ハグを拒否。

「反抗期か?」

「奥ゆかしき日本人なので、おおやけの場所で殿方との抱擁には抵抗が…」

 恥じらうように言うと、古江ふるえは無表情でヘルメットを突き付ける。

「はい」

「はい…」

浅木あさき、俺も男だよ…?」

「知ってるよ…?」

 バイクに跨り、ヘルメットを被りながら、

「煽り上手かよ…」

 そう呟いた古江は、私を見て、

「行くぞ…」

 思いっきりギュッと私の手を掴んで、そのままバイクの後ろに乗せる。

「俺は本気だよ…」

「はぁ?!」

 バイクの排気音で、よく聞こえない。

「好きだよ。お前の声…」

「聞こえないぃ」

 呟くようにワザと言ってるから、耳を近づける。

 心臓の音が、よく聞こえる。

「大好きだぞぉ~」

「ちゃんと運転しろっ!!」

 全部、聞こえてるよ。

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