第4話 可能性

 放課後


「本当に大したないって言い張るのなら犯人を探しましょう!」


「え?」と私は、思わず目を丸くしました。


「だって朋、考えてみなさい」


「考える? なにを」


「貴方は昨晩、暴漢に襲われました」


「そんな大げさな」


「大げさじゃありません!」


「……はい」


「それなのに、あなたは『大丈夫、大丈夫。病院? そんな大袈裟な』って言う」


「だって……」


「女の子が夜に学校で襲われたのなら、普通は警察に相談するわよ。最悪、先生には言うべきよね?」


「そうかな? 誰かの悪ふざけで抱き付いて、私がうっかり気絶しただけかもしれないわ」


「気絶したあなたを放置した時点で大罪よ」

 

「それも……そうかしら?」


「そうよ。それに、今後も同じ事が続くかもしれないわ」


「同じ事……」と朋は、赤い瞳を思い出した。


「ねぇ、礼。赤い瞳ってあり得るかしら?」


「ん~? その犯人の瞳が赤かったって言うの?」


「見間違いかも……」


「いいえ、カラコンかもしれないわ。それに目と間違えるような光が2つ、並んでいたかもしれないでしょ?」


「なるほど」と朋は納得する。


「それじゃ現場検証ね」 


「現場配信って本格的ね」と朋は苦笑した。


「下校のチャイムがなる。暗い中、犯人はあっちの方向から来たのよね?」


「うん、姿も見えなかったから、方向は間違いないわ」


「どうして、犯人は電気もつけず、暗闇を歩いていたのかしら?」


「どうして?」


「下校時刻で電気をつけるのに負い目があるにしても、スマホをライト代わりにしてもいいのにね」


「――――」と朋は答えなかった。


 礼が言っている意味。 それはまるで……


「犯人は、何をしていたのかしら?」


「何って?」


「何も理由がなく、下校時刻まで学校に残っていたのかしら?」


「――――」


「えぇ、朋が沈黙する理由もわかるわ」と礼はため息をついた。それから――――


「犯人は、下校時刻まで残って獲物を物色していた可能性があるわ」 




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