第26話 合流
そんな一連の騒ぎに、周囲で就寝中の住民達も気づかない訳はなかった。一体何事かと何人も窓から顔を覗かせている。トロル・ロードの存在に慄く者もいたが、傍にエイドがいるので、ほとんどの者はおおよその理解はしているようだった。
それでもメリアにとっては視線が痛かったが、とにかく現状確認が優先だ。戦闘が終わっても、まだ魔獣使いの援護効果が有効であったため、辛うじて元の探知能力が働いていた。
(あとは……大討伐広場にいる奴だけど……)
視認はできない距離だが、気配は残っている。強者の方には勝利できたが、今のこの状況は少々不可解だった。
(……なんか妙な感じ。なんで微動だにしないの? こっちの手助けをしようとする気配は微塵もなかったし)
向こうもこちらの存在に気づいているはずだが、以前のマティカの森の時と同様で、全く動く気配がないのだ。その疑念はエイドも同様だったようで、同じ方向を気にしていた。
「とにかく、あとは向こうの対処だな。よく分からないが、すぐに処理しないとマズい気がする」
(そうね……!)
メリアも同意し、共に向かおうとした刹那――
「……もう……遅いがな……」
『⁉』
二人は僅かな気配に反応して、声のする方に振り向く。すると、もうほとんど消え掛けだったが、まだそこにネグヴァの残り火があった。
「……やれやれ……時間稼ぎのために出張ってきたが……この目で見ることができなくなるとは、無念なことだ……」
その聞き捨てならない台詞に、エイドが追及する。
「どういう意味だ!」
だが、徐々に小さくなってゆく気配は素っ気なかった。
「答えるつもりはない……」
『!』
二人が眉根を寄せる中、ネグヴァは最後の力を振り絞る。
「……せいぜい……足掻くが……よい……」
そのまま今度こそ完全に消滅すると、二人はすぐに意識を切り替えていた。
「……ただの強がり――って、断定する訳にもいかねーな」
(そうね……!)
再び移動をしようとしていたが――
「――あ! エイド君!」
と、ここで急に聞き覚えのある声に呼び止められる。
『!』
同じように二人が振り向くと、街道の先から見覚えのある女子が慌てて駆け寄ってきていた。
「良かった。メルちゃんも一緒なんですね!」
フミルのその珍しい様子に、エイドが首を傾げる。
「どうした? こんな時間に」
すると――
「――なんでもいいですから!」
『⁉』
焦燥感をさらに募らせながら傍を通り抜け、二人を道の先へと誘っていた。
「とにかく、私と一緒に急いで大討伐広場まで行ってください! 理由に関しては、道中で説明します!」
メリアもエイドもその目的地に敏感に反応。
『……!』
パズルのピースが一気に揃ってきているように感じ、二人とも否応なく駆け出して少女の背を追っていた。
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