第13話 暗躍
スティーダム王国はかつての旧世界で大都市があった場所に築かれているため、国内にはその痕跡がまだ至る所に残っていた。既に風化が進んでおり、元の形状はほとんど留めていない。だが、それらは明らかな人工物であり、今よりも人類が大繁栄していたことを示す紛れもない証拠だった。
それらの遺跡群は、人に知られていない場所も多い。多くは雑木林の中に埋もれているからだ。そういった場所は大概フォグ・モンスターの棲み処にもなっており、人の手は届かなかった。
そんな中に、以前は巨大な塔か何かだったと思われる建造物があった。上部はほとんど崩れていたが、辛うじてその痕跡が残っている。同じような人工物が他にもいくつかあって密集しており、ここには確かに歴史が残されていた。
その内の一つ――
内部が植物に侵食されていない遺跡に、一つの影が近づいていた。レッサー・デビルと呼ばれるアンデッドに近いフォグ・モンスターで、かつての魔王の欠片から生まれたとされている。その魔の物は静かに空洞の中まで進むと、ほぼ中央で立ち止まっていた。
しばらく時間が停止したような光景が続いたが、やがて遺跡の影の一部がさらに濃くなって集束を始める。そして、レッサー・デビルの前で人影のような形を取っていた。
その虚ろな存在は、目の前にいる魔の物から思念のみで報告を受ける。全ての情報を吸い上げると、その影はどことなく笑みを浮かべたようだった。
「……左様か……リギウスは首尾よくあの巫女を無力化したか……わずかに残っていたお前をようやく発見して、これからという時に目障りな登場をしてくれたものだが……」
それだけ呟くと、徐々に外に向かって移動を始める。一方のレッサー・デビルはその背を追いながら、何事か思念で相手に尋ねたようだ。それに反応する形で、虚ろな存在は足を止めて振り返っていた。
「既に準備は整っておる。行くぞ」
それ以上の会話は特にない。必要もなかった。二つの魔の物はその場所から連れ立って去るのみ。そこには確固たる共通の目的があり、迷いなどは微塵も存在していなかった。
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