第12話 あの有名な台詞が

 死霊術師を倒した後、すぐにお父さんたちと合流することができた。

 すでにお城まで辿り着き、城内のアンデッドを浄化させていたところだったみたいだ。


「死霊術師を倒してくれたのはアークか」

「うん」

「よくやったぞ」

「レイラも頑張ったよ!」

「よしよし、レイラも偉いな」


 どうやらお父さんも元凶の存在を感知していたようだ。

 というか、最初から分かっていたのかな?

 だからお城を目指して進むようにって言ったのかもしれない。


「お城の外は?」

「おおよそ片づけたぞ」


 お城のバルコニーから見てみると、確かに戦闘はあらかた終わっているようだった。

 死者が新たなアンデッドになることもなくなったし、あとは兵士たちがどうにかするだろう。


 中庭にいたアンデッドキメラも倒されている。

 お父さんがやったのか、僕が死霊術師を倒したことで自滅したのか分からないけど。


 お城の中にいたアンデッドも掃討し、お城を出ようとしたところで、兵士たちが駆け寄ってきた。

 進路を塞がれてしまったので、僕たちは足を止める。


「ふむ?」


 遅れて豪華な武装のおじさんが進み出てきた。


「先程は助かった。あのままではあのキメラによって我らは全滅していただろう」

「あんたは?」

「わしはラーハルト。この国、エデルハイド王国の国王をしておる」


 王様だった。

 お父さん今「あんた」とか言っちゃったけど……。


「そうか。アンデッドを操っていた死霊術師は倒した。これでもう新しくアンデッドが生まれることはないと思うぞ」

「ほ、本当かっ?」

「ああ」


 王様だと分かっても、お父さんの態度はまったく変わらない。

 まぁこの人らしいけど。


「陛下、ご報告です! 部隊の大半が敵の鎮圧に成功したとのこと! 訊けば、謎の青年と赤い髪の女性の加勢で……あっ」

「ふむ、もう青年というような歳ではないけどな」

「まさか、貴殿らが……?」


 それから王様はぜひとも礼をしたいと言ってきたけれど、お父さんはそれを固辞した。


「別に褒美のためにやったわけじゃないからな。それに、早いところ魔王城に行かなければならない」

「なっ……貴殿は魔王を倒そうというのか……?」

「ああ。他に倒してくれる奴がいればそれでもいいんだが」


 王様は感動したようだ。


「なんと素晴らしい若者だ……。人類のために、危険を顧みず戦おうとするとは……」

「メインはこの二人の訓練だけどな」


 いや、そこは黙っておこうよ……。


「そんな年端もいかない子供たちを連れていくつもりか!?」

「心配しなくていいぞ。二人とも魔王軍の幹部ぐらい倒せる強さだからな」

「だ、だが、祝福もまだだろうに……」

「心配要らないよ、おじちゃん! レイラ強いから!」


 ちょっと、レイラ!

 王様におじちゃんなんて……いやもう、今さらか……。

 配下の人たちも苦笑しているだけで咎めてくる様子はない。


 そうして僕たちは彼らに盛大に見送られながら、この国を後にしたのだった。


 ……そう言えばあの女の子、大丈夫だったかな?

 あの後、近くにいた女の人に任せてすぐに去っちゃったけど……。


 もう少し男らしく心配してあげた方が……いや、年下の男の子にされても恥ずかしいだけか。


 せめて最後にもう一度だけでも顔を見たかったな。


「どーしたの、アーク? ぼーっとして?」

「な、何でもないよ」

「?」









 僕たちはついに魔王城に辿り着いた。


 ……普通、魔王討伐って、勇者が幾多の試練を共に乗り越えてきた仲間たちとともに挑むものだよね?

 僕ら、めっちゃ家族連れなんだけど?


 だいたい僕とレイラなんてまだ八歳だ。


 いや、ドラ〇エ5ってあったな……。

 あんな感じだと思えばいいのか……ちょうど双子だし。


 ともかく僕たちは魔王城へと突入した。

 途中、魔族と魔物の大群に取り囲まれると、お父さんが従魔たちを召喚した。

 うん、本当にドラ〇エ5っぽい。


 その従魔たちは、ベヒモス、リヴァイアサン、フェニックス、上級悪魔、グラトニースライムと、ストーリー終盤で仲間にできる魔物をレベル99に上げ切ったようなラインナップだ。


 彼らだけで大群を蹴散らしてくれ、僕たちはあっさり魔王のところへと辿り着いたのだった。


 魔人族と呼ばれ、姿形において人とそれほど差のないタイプの魔族。

 少し大柄の人間といった程度の体格だし、肌が赤くなければ人間と見分けがつかないかもしれない。


「どこかで会ったことないか?」

「そ、そんなはずなかろう!」


 お父さんが訊くと、魔王はなぜか焦ったように全力で否定した。


「それより我が魔王軍を相手にこれほどの力を示すとは。殺してしまうには惜しい存在だ。どうだ? 我の配下にならないか? もし我の配下になれば、貴様に世界の半分をくれてやろう」


 おおっ、あの有名な台詞が出た!


「いや別に世界なんて欲しくないんだが」


 お父さんは即答だった。

 普通もうちょっと悩まないかな……?


「そうか。ならばここで死ぬがよい!」


 魔王は叫び、力を解放した。

 ……お父さんに完膚なきまでに叩きのめされたけど。


 普通、魔王って一人で倒すようなものじゃないよね?


 まぁ二十人に〝分身〟したお父さんがおかしいのか。

 天〇飯と違って、戦闘力が分割されるわけじゃないし。


 ともかくこうして僕たちは魔王討伐に成功したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る