第94話 十一歳の少女
Aftersun(アフターサン)という映画を観ました。目立った事件の起こらない静かな映画なのですが、今のところ今年で一番感銘を受けた映画です(まだ1ヶ月ちょいしか経ってないですけどw)。
先ほど検索したら、数々の賞を受賞して、アカデミー賞にもノミネートされた映画のようです。
舞台はトルコのリゾート地。イギリス人の父娘が過ごす夏休みのお話です。
この娘さんが十一歳なんですが、私の娘と同い年でして。このくらいの年の少女って、特別な輝きを持っていると思うんですよ。
もちろん、赤ちゃんでも中年でもお年寄りでも、それぞれの年齢に特有の輝きがありますが、十一歳くらいって、子どもと大人を行ったり来たりする、不均衡で不思議な魅力のある年齢だなと感じます。
夫と二人で、主人公の女の子のことを、なんて可愛いんだろう、と自分たちの娘と重ねてキュンキュンしながら観ました。なんでもない日を過ごしている、ふつうの女の子の輝きが、息をのむような解像度で表現されていました。
映画ってちょっとずるいんですよね。主演のフランキー・コリオちゃんが可愛くって! 彼女の存在感が映画のクオリティをあげてましたね〜。小説でこれを表現するのは至難の技だと思います。
娘にメロメロのお父さんも可愛らしくて、二人のやりとりがとても愛おしくて、観ていて胸をキュッと掴まれたような気持ちになりました。
加えて、ああ、この時間は二度と戻らないんだよな〜って、しんみりするような、優しくて悲しいアンダートーンが感じられます。
観終わった後、「ああ、いい映画だったね〜」とほっこりして就寝したのですが、なーんかこう、引っかかるというか、朝になっても映画のことが頭から離れられないんですよ。
夫も同じだったようで、翌日の朝一番にスマホで映画のことを検索した夫が「ええ!」と声をあげました。
この映画は監督の経験を元にしていました。映画ではあえて明確に表現することを控え、視聴者の想像にゆだねるようなエンディングだったんですが、監督のインタビュー記事に、はっきりと何が起こったか書いてあったんです。(ネタバレになるので、何が起こったかは書かないでおきます)
それを聞いた私もガーンと衝撃を受け、二人して二日くらい映画の余韻に浸ってました。明確に表現していなくても、お腹の底にジワジワと確かに伝わるものがあったんです。そこへ「そういうことだったのか」という外部情報でダブルパンチでした。すごい映画だったなぁ。
この年になって、子どもが大人になる過程を描いた物語に、前よりもずっとグッとくるようになりました。
子どもの頃に観た「魔女の宅急便」も「スタンド・バイ・ミー」も、大人になって再度観たら、その年代特有の輝きにキュンキュンし、主人公の抱える葛藤に若い頃の自分を重ねてウルっときました。
さらに、今は自分の子どもが大人になりかけてる年齢なので、自分の若い頃プラス我が子も重ねてしまって、感動の層が厚いと言いますか(←イミフ)。
十一歳くらいの少女ってね、もう、感動的な魅力をウワーッと放ってると思います。でも、その魅力が深く理解できるようになるのは、それから何十年も経った後なんだよなぁ。歳を取るって、いいこともありますね。
Aftersun(アフターサン)、おすすめです。十一歳くらいの娘がいる人には特に(笑)。
追記:子どもが大人になる過程を描いた映画や小説、おすすめがあれば教えてください。
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