第91話 夏休み

 オーストラリアの小学校はクリスマス前から一月末までの約六週間が夏休みになります。


 クリスマス休暇から帰ってきて、一週間仕事に戻ってましたが、また一週間お休みして家族でキャンプに行ってきました。


 隙あらばスマホやパソコンやタブレットばかり観ている、スクリーン中毒気味な一家なのですが、キャンプ中の一週間は、ほとんど何のデバイスにも触れませんでした。


 ネットが恋しいとか、ストリーミングが観たいとか、全然思わなかったんですよ〜。子どもたちも同じようでした。


 インターネットが悪いなんて全然思わないんですが、家族そろって依存しているので、ネットがない生活を短期間でも経験するのは貴重ですね。


 ビーチへ行ったり、山登りをしたり、川で泳いだり、野外活動を満喫して、すっかり日焼けして帰って来ました。特に息子は人種が変わったかと思うくらい真っ黒けです。


 子どもたちのお友達家族と合同でのキャンプでしたが、予想外に規模が大きくなり、十三家族が参加しました。


 キャンプ場はビーチに隣接していて、徒歩一分でビーチへ行けます。キャンプ場内にはトイレ、シャワー、野外キッチン、カフェもあって快適。


 遊具のある公園もあり、子どもたちはお友達とキャンプ場とビーチを行ったり来たりして自由に遊び、親は親同士でおしゃべりしながらアウトドアライフが楽しめるという、夢のような環境でした。


 ハイライトはたくさんあるのですが、一番感動したのは、海からのぼる朝日を見たことです。


 娘が「海上の日の出を見ながら泳ぎたい」なんてロマンチックなことを言い出し、娘のお友達も参加することに。子どもだけで海へ行かせるのは危険なので、私は付き添いとして同行することにしました。


 日の出は六時ちょい過ぎとスマホで確認できたので、五時四十五分に目覚しをセットして寝たのですが、五時半に娘のお友達から起こされて起床(笑)。


 今回気づいたのですが、日の出の三十分前からけっこう明るいんですね。起こされた時、外が明るかったので、「寝過ごしたァ!」と肝を冷やしましたよ。


 オーストラリアの海は温かいイメージがあると思いますが、ビクトリア州の海は南極と直結しているので、夏でも水が非常に冷たいんです。


 明け方は特に寒いので、娘と娘のお友達はウェットスーツを着てビーチへ。私はパジャマに上着を羽織って同行しました(←泳ぐ気まるでなし。だって本当に水が冷たいんだもの……)


 日の出の直前、空はピンクと紫の中間のような色で、空気は薄いセピア色。ビーチには私たち三人しかおらず、波の音と鳥の声だけが聞こえていました。


 みずみずしい空気を吸い込むと、体内が浄化されていくような気持ちになります。ものすごくピュアで健康的なのに、危険な感じもして、うっとりするような色っぽい情景。


 何かの魔法でサンクチュアリに紛れこんでしまったような、神聖で特別な空間でした。

 

 子どもたちは「キャー! 冷たいっ」と言いながら早速海に入り、私はビーチに座って日の出を待ちました。


 オレンジ色の太陽が海岸線から登ってきて、光を反射して海にオレンジ色の線ができます。コントラストで、手前の岩の形が芸術的に浮き上がりました。


 太陽の美しさに圧倒されて写真を撮ると、写真では太陽がとーっても小さく見えます。えー! ちが〜う! もっとずっと大きくて圧巻なのに! と歯噛みをしました。写真あるあるですね。


 女の子二人のシルエットが遠くで見えました。二人でじゃれあってるみたいで、海面からぴょんぴょん飛び跳ねてる頭が見えたり、両腕が見えたり、両脚が見えたり。


 バラード系のミュージックビデオにそのまま使えそうな、エモい絵面でした。


 虫にかまれたり、雨に降られたり、テントの中が砂でザラザラになったりと、不快な要素も多いキャンプですが、また来年もぜひ行きたい! と思えるような夏休みになりました。


おまけ:夜中にトイレに行った時、ウォンバットに遭遇しました。ウォンバットは、イノシシを丸っこく太らせて、顔をのんきにしたような、オーストラリアの動物です。ちなみに夜行性です。


 遠くから見たことはあったのですが、手で触れられるくらい近くで見たのは初めてでした。脚が短くてお尻が大きいので、歩くとお尻がモコモコして可愛いかったです♡

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