第78話 学校行事でお泊まりの長女

 十歳の長女は今、佐賀県の波戸岬という海沿いの町へ、小学五年生のみんなでお泊まりに行っております。一泊二日なので『修学旅行』と呼ぶには小規模すぎるのか、『宿泊学習』って呼ぶみたいです。


 佐賀県って、海も山もあり、農作物や家畜も育ちやすく、何気に恵まれた土地です(ってことに、今回の帰省で改めて気づきました)。長女が泊まっている『波戸岬少年自然の家』では、玄界灘が一望できるそうで、豊かな自然の中で野外炊飯をしたり、ウォークラリーをするらしいです。


 さらには、カッターボートと呼ばれる全長九メートルの大型ボートを、児童二十人一組になって一緒に漕ぐイベントがあるらしく、私も参加したいくらいです。楽しそう〜。


 この『宿泊学習』について、娘は不安でいっぱいで、「ホームシックになるかも……。行くのが怖い」と言ってたんですよ。そりゃーまあ、そりゃそうだよね〜、って思いました。


 親の予想通り、八歳の息子はサッカーを通じてお友達ができ、問題なく学校になじんでいます。日本語は今でもカタコトですが、だいぶ話せるようになってきました。年齢的にまだ幼いのと、日本語を間違っても気にしない性格が功を奏したようです。


 十歳の娘のほうは、これまた予想通り、年齢的にも性格的にも、クラスに馴染むのに苦労している模様。心を開くのに時間がかかるタイプで、『友達』とその他大勢の線引きがハッキリしてます。そのかわり、いったん『友達』になると長く大切に付き合います。


 日本では、クラスの子どもたちがとても親切にしてくれるそうなのですが、娘の定義では『友達』ではないらしいので、心を開いてないんだろーなと思います。短期だし、言葉の壁もあるし、そりゃーまあ、そうだよね……(←二回目)。


 クラスに友達がいないのって寂しくないのかなと心配だったりしますが、案外そのへんはアッサリしているようで、普段の通学ではあんまり気にしてなさそう。


 ただ、そんな状況でクラスメイトと一泊するのは、やはりハードルが高い。無理に行かなくてもいいかな、と最初は思いました。


 でも、『宿泊学習』なんてレアな機会が、ちょうど滞在中に重なったなんてすごくラッキーなことです。


 一緒に野外でカレーを作ったり、カッターボートを漕いだり、お風呂に入って一つ屋根の下で寝たりしているうちに、クラスメイトとも絆が深まるんじゃないかな〜と。そうすると、今後の学校生活もより充実したものになりそうじゃないですか。


 ってことで、娘と話し合ってみました。……というか、かなり押しの強い営業トークをしました(笑)。最終的には本人がやる気になってくれて、今朝は笑顔で旅立ちました。健気にがんばってんな〜(涙)。


 元パリピの夫の習性を引き継いでいるのか、大勢でやるイベントごとは好きなので、行ったら行ったで楽しいと思うんですよね〜。


 無用な心配はいらん。絶対大丈夫って、思ってるんですけど。そして今そうタイピングしてるんですけど。


 いや〜、でもやっぱり気になりますよね。今なにしてるのかなぁ。いい思い出になったらいいなぁ。明日の午後に帰って来るので、その時に顔を見るまではソワソワしてそうです。


 

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