第60話 担当美容師さんになぜかイラッとくる話

 海外にいると、自分に合う美容師さんを見つけるのが難しいなと感じます。いろんな国の方に切ってもらったんですが、私がしっくりくると感じるのは、やっぱり日本人の美容師さんです。


 世界基準でも日本人美容師さんの腕はすごいな〜って思います。お話を聞いていると、なにせ練習量が世界一です。もちろん、日本人美容師さんもいろいろですが、全体的な技術のスタンダードが高いんですよ。アジア人の髪の扱いに慣れてるっても大きいです。


 というわけで、メルボルンに2017年に帰ってきたとき、日本人の美容師さんを雇っている美容院を探しました。


 市内に値段がリーズナブルなところを見つけて試しに来店。その時に担当してくださったのが公子さん(仮名)です。


 公子さん、日本で十年ほど経験を積んでから渡英され、イギリスで五年ほど経験を積み、オーストラリアでも十年以上美容師をやっていらっしゃるベテランです。年齢的には、私より五歳くらい上でしょうか(推定)。


 公子さんに切ってもらうと、自分でもいいなと思いますし、まわりにも褒めてもらえるという、とっても腕のいい美容師さんです。


 公子さんが日本に長期で帰省されていたとき、同じ美容院の他の日本人美容師さんに切ってもらったことがあるのですが、悪くはないものの、やっぱり公子さんのカットと比べると今ひとつでした。


 そんなこんなで、よく考えてみたら六年くらいずーっと公子さんに髪を切ってもらっています。これを書いている今日、久しぶりにショートボブにしてもらって、イメージどおりでお気に入りです。


 なのに……。公子さんと話してると、なぜか微妙にイラッとくるんですよ……。


 公子さんは接客のプロです。だから、私とも絶対に話を合わせようとしてくれてるはずですし、きっと他のお客さんの中には、公子さんのトークが大好きって方も大勢いらっしゃると思います。そのくらい、明るくて楽しい方です。


 対する私も、できるだけお互いに気持ちの良い時間が過ごせるように、当たり障りのない話題を選び、礼儀正しく談笑しているつもりです。


 にもかかわらず、髪を切り終えて会計を済ますころには、モヤモヤ〜っと、なんかこうイラ〜っとした気分になってるんですよぉ。


 でね、全くの勘ですが、絶対に公子さん側も私のことを同じように「なんでか気に入らねぇな」って感じていらっしゃる気がするんです。こういう勘って当たるんですよね〜!


 しかも、理由がまるで思いつかないっていう……。会話の波長というか、性格の相性というか、なにかが徹底的に合わないんだと思います。本当に不思議です。


 話してて気持ちよくなるような、もっと相性のいい方を探そうかな。美容院変えようかな。なんて思ったりもしつつ、必ずイメージ通りに切ってくれる安心感に負けて何年も経過しています。


 ってことを夫にポロッと話したら、「おお、俺の場合は逆だ」と思いがけない返事が。


 夫はイラク系兄弟がやってる床屋さんに五年くらい通ってるんですが、「スタイリングはイマイチだけど、キャラがいいからつい通っちゃうんだよ。違うとこ行こうかとも思うんだけど、あそこ行くと落ち着くから、いまだに通い続けてるんだよね〜」とのこと。


 お兄ちゃんはほとんど一言もしゃべらなくて、弟さんはしゃべりっぱなしで黙らないコンビだそうです。息子にいつも飴をくれるのもポイント高いです。


 夫婦して、違う理由でイマイチだと思う美容院に、これまた違う理由で何年も通い続けているのでした。


 みなさんは、美容師とか歯医者さんとか、定期的に通う場所で、こういうジレンマあります?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る