第55話 サイコパス

 ジェイムス・ファロンさんという神経科学者をご存じでしょうか。「サイコパス・インサイド―ある神経科学者の脳の謎への旅」の著者です。


 彼は、サイコパス・キラーの脳の研究をしていて、サイコパスの脳には特定の構造が見られることを発見します。「普通」の人たちの脳と比較してみようと、一般人の脳のスキャンも撮って研究していたところ、「普通」の人たちの脳スキャンの束の中に、一枚サイコパス・キラーと同じ構造を見つけます。


「サイコパスのスキャンが紛れたのかな? もしそうでなければ、サイコパス・キラーと同じ脳を持った人が、一般人として野放しにされてるぞ」と思ったジェイムスさんは、その脳を持つ人が誰か特定します。


 なんと、サイコパス・キラーと同じ脳をした一般人とは、ジェイムスさん自身だったそうです(ドドーン!)。事実は小説より奇なりの典型ですね〜。


 ジェイムスさんは、高校の時の恋人と結婚して三人の子どもがおり、神経科学者としても成功していて、ごく普通の人間だと思って五十年以上も生活していらっしゃったので、衝撃的というより、信じられない出来事でした。


 そこから、ジェイムスさんのご自身のサイコパス性と、なぜサイコパスと同じ脳を持った自分がごく普通の生活を送ることができたのかを軸に、研究を始められます。それをまとめたのが上記に記した著書です(読んでないんですけど w)。


「僕の脳はサイコパスと同じ構造でも、僕自身はサイコパスじゃない」と確信を持っていたジェイムスさんは、ご家族や親友たちに「正直に教えてほしい。今まで、僕がサイコパスかもと思ったことある?」と聞いたところ、「昔から、お前は頭がおかしいって何度も忠告してきたじゃん」と言われたそうです(笑)。


 最近読んだ本やネット情報によると、サイコパスって、みんながみんな殺人鬼や犯罪者というわけではなく、普通に生きている人のほうが多く、社会的に大変な成功を収めている人もいるらしいですね。


 ある研究によると、サイコパスの割合は人口の1%、ソシオパスも入れると4%ほどだそうです(サイコパス・ソシオパスの診断は難しく、定義もバラつきがあるため、確定的な数値ではありません)。


 百人の集団の中で、一人〜四人がそうってことですよね。けっこう多いな! って思います。


 サイコパス・ソシオパスを含むパーソナリティ障害全体で見ると、6%〜9%(こちらも諸説あります)だそうです。こうなると、身近な人の中に二、三人はいる感じですね。


 パーソナリティ障害関連の本やネット記事を読んでいると、だんだん「あ、あの人、もしかしてそうなんじゃ……」「あの人も、そうだったのかも……」なんて思えてきたりして、おもしろいです。


 パーソナリティ障害なんていうコンセプトを知らなかった時は、「あの人、なんか苦手だな」「よくわからない人だな」くらいでスルーしてたのが、「パーソナリティ障害なの(だったの)かも」と思うと、だいぶ話が大きくなる気がします。


 障害や疾病などの名前を付けるという行為は、諸刃の剣的なパワーがあるなと感じます。


 パーソナリティ障害に関していえば、「あの人、パーソナリティ障害なのかも」と思うことで、その人の不可解・理不尽な行動に理由をつけることができますし、対処法がわかるかもしれません。


 自分がパーソナリティ障害を持つ人から被害を受けている場合、対処法を知ることが、極めて重要になってくると思います。また、場合によってはパーソナリティ障害を治療することも可能です。


 一方、「あの人、パーソナリティ障害なのかも」とレッテルを貼ることで、「私とは違う」と差別的な見方をしてしまうこともあるのかな〜って思います。サイコパスに至っては、「怖いから近寄らないようにしよう」と思ってしまったり。


 サイコパスを含むパーソナリティ障害を持つ人は、「普通にいる」「普通の人だ」「個性の一つ」くらいに思っててもいいんじゃないかなぁと、今は思っています。


「そんなふうに考えたら、危ないじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。でも、たぶん、実際に身近に普通に暮らしていらっしゃるんだと思うんですよ。ご本人にすらわからない場合も多々あるそうですし。自分がそうである・もしくは事故や疾病などでそうなる可能性もあります。


 人間、いろんな個性があって、自分とは全くかけ離れた考え方をする人もいる、ということを念頭に、相手が誰であっても、自分や自分の大切な人に危害や危険が及ばないような人間関係を構築・維持(もしくは逃避)していくしかないな、と思ったのでした。


 昔からパーソナリティ障害には興味があったのですが、最近特に気になるようになり、本やネット記事・動画を読んだり見たりしています。というのも、身近に「そうかも」という人が現れたからだったりするんですけどね。ふふ♡ 一方的にレッテルを貼って、差別的な見方をしないようにしないよう気をつけつつ、対処法を考えたいところです。


追記:先週のエッセイで、若月ひかるさんの小説の書き方を紹介しましたが、私が又聞きの情報でエッセイを書いてしまったばかりに、間違いがあったようです。神楽耶夏輝さんから以下のコメントをいただきました。


「若月ひかるさんは、あくまでもウェブ小説でバズる方法、みたいなことで、実証としてなろうでこの方法を試した、みたいな内容で動画投稿されていただけです。こうしたらウェブ小説バズるよ、みたいな感じです。

この方法で、常に小説を書かれているわけではありません。

書いては捨てて、という事を指南されているわけではないです。

ちゃんと、作品を大事にされる作家さんのはずです。」


若月ひかるさんにも、神楽耶夏輝さんにも、申し訳ないことをしてしまいました。又聞きの情報でエッセイを書いちゃダメですね。ごめんなさい。

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