第49話 おじいちゃんが残したカセットテープ

 夫の子どもの頃からの思い出の品などが入った段ボール箱があるのですが、今までお義母さんの家に置いてありました。


 今月、お義母さんが我が家に泊まりに来たついでに、「そろそろそっちで管理しておくれ」と例の段ボール箱を持って来てくれました。


 これを機に、夫の小学校の時の絵だとか、高校の時のアルバムだとか、みんなでワイワイ中身を確認してたら、お義母さんが「ええ〜!」と叫びました。


「こんなところにあったなんて! 二十年くらい探してたのよ〜!!」と言って見せてくれたのは、一つのカセットテープでした。


「私が高校生だった頃、父の人生について語ってもらう課題があったんだけど、それを録音したテープなのよ。ずーっと探してたんだけど見つからなくて。こんなところに紛れてたのね」と感無量な様子。


 お義母さんのお父さん、つまり夫の祖父は、ホロコーストのサバイバーです。家と財産を奪われ、収容所に入れられ、家族や友達をことごとく亡くして、行き先すら知らされずにオーストラリアまで船で送られ、新たな人生を一から作った人です。


 私はお義母さんから話をちらっと聞いただけですが、今の私には想像もできないような困難と奇跡に見舞われた人生だったようです。


 そんな人生をご自身が語ったカセットテープです。マジで見つかってよかったです。


 そんなレアなカセットテープ、むっちゃ聴きたいじゃないですか。でも、テープレコーダーが家にありません。CDプレーヤーすらないし。


 ってことで、お義母さんが親戚の誰かからテープレコーダーを入手してきました。テープレコーダ見たの、二十年ぶりくらいでしたよ。そのテープレコーダー、電池式だったんですけど、単一サイズが四ついるタイプでした。単一電池も、最後に見たのいつか……って感じです。あんなデカいサイズの電池、もうあんまり使わないですよね? 


「まずは一人で聞いてみるわ」と、お義母さんは、例のテープとテープレコーダーと単一電池を持って、家に帰って行きました。なので、私も夫も、まだそのテープは聞いていません。


 亡くなったお父さんの声をテープで聞くの、どんな気持ちだろうなぁと、想像してしんみりしています。そりゃ一人で聞きたいですよね。


 故人が残したカセットテープ。小説のネタになりそうなロマンチックなアイテムだなと思います。


 一人で聞いてみて、内容が大丈夫そうだったら、夫や私にも聞かせたい、と言っていたので、そのうち聞く機会があるかもしれません。その際は、日記かエッセイに記録しておこうと思います。


 平凡な人生を送っていても、たまに小説みたいなエピソードにぶち当たること、ありますよね〜。

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