第41話 ユーチューバー

 モライア・エリザベスさんというユーチューバーに、十歳の娘がここ何年もハマっております。絵を描いたり、ぬいぐるみを改造したり、布を染めたり、図画工作っていうのか、アート&クラフトっていうのか、まあ、そんなことをやっている過程を、実況中継みたいな感じで動画にして、毎週YouTubeに上げてる方です。


『隣のお姉さん』的な、フツーの若い女性っぽいんですが、動画の編集が上手で、ユーモアもあって、娘がリビングのスマートテレビで観てると、ついつい私も観入ってしまいます。


 ご自分でデザインしたキャラのグッズをオンラインで販売していて、娘は二年前から、お小遣いを貯めてグッズを買うようになりました。ちなみに、モライアさんはアメリカの方なので、商品もアメリカから郵送。娘は少ないお小遣いの中から、ためらいなく高い郵送費を払ってます。娘、八歳にして推し活デビューです。


 YouTubeのチャンネル登録者数が800万人近い人気者の彼女。人気の秘訣はいろいろあると思うのですが、私が特にいいなと思うのは、ズバリ、絵も工作も、ものすごく上手ってわけではないところです(ドドーン!)。いろんなことに挑戦して、失敗してるところもそのまま公開。「うわー、ブサイクになっちゃった」とか自分で言いつつ、すごく楽しそうなんですよ。


「私って才能あるのかしら」なんて悩んだことなさそう(知らないですけど)ですし、『プロのクオリティを目指す』とか『賞を取って有名になりたい』とか、そういう方向のやる気は全く見られないです(笑)。もう十分に有名ですし。動画とグッズ販売で経済的にも潤ってそうですし。


 なんかこれって、新しい形の商業アートかも〜って、ふと思いました。インターネットがなかったころは、アートを公開できる場が限られてたんですよね。なので、多くの人に作品を見てもらいたかったら、どっかのエラい人に認めてもらうしか道はなかったのだと思います。


 そうすると、『ちゃんとした』やり方で、『ちゃんと』訓練を受けた、才能のある人だけが、アートを公開したり、教えていい、みたいな雰囲気があった気がします。


 モライアさんの動画を観てると、誰でも自由に『楽しい』ってだけで、創作していいんだよな〜。他の人と比べるんじゃなくて、過去の自分と比べて『上手になった』って喜んでいいし、『楽しい』を教えることに、免許とかいらないんだよな。などと思います。


 そして、過程を公開することでお金をもらうっていう、一昔前までは考えられなかった職業が成立しているのが、おもしろいなと思います。


 音楽も小説も、映画でさえも、「ある一部のエラい人に認めてもらう」という通過儀礼を経由せずに、多くの観客に届けられるチャンスがある、というのは、すごいことだなと思います。


 もちろん、いいことばかりではなくて、『アートで食べて行く』ということが、より難しくなった一因でもあるかなと、個人的には感じています。


 Spotifyなどのサブスクのストリーミングで音楽が配信されるようなってから、ミュージシャンは、今いる数多のミュージシャンだけじゃなく、歴代のミュージシャンとも競わないといけなくなりましたよね。


 私の小学生の娘と息子は、ジェームス・ブラウンも、マイケル・ジャクソンも、ビリー・アイリッシュも、同じ感覚で好きです。新旧の境なく、膨大な音楽の中から『好き』を見つけています。これって、今の若手のミュージシャンからすると、ものすごく大変な状況だなと思います。


 ま、そんな世知辛い現実はさておき、モライアさん、母子ともども好きです(私はファンって言えるほど動画を観てませんが)。


 モライアさんの動画の中で、質問コーナーがあり、『どうやったら、創作のモチベーションがそんなに続くのですか』という質問がありました(ちなみに、モライアさんは何年も毎週の動画配信を欠かしていません)。


 モライアさんの回答は「もう、何かを作るのが習慣になってるから、やる気とかいらなくなっちゃったのよ。自動的に手が動くの。あなたも、創作を続けたかったら、習慣になるまで毎日やったらいいと思うよ」というものでした。


 モライアさん、いいこと言うな〜。


 大人になるにつれ、『習慣にすること』の力をしみじみ感じます。個人的には、意思の力や情熱なんかより、よっぽど頼りになってます。それから、プロセスを楽しむことがすごく大事だなと思うようになりました。目標というのは、プロセスを楽しむためのネタに過ぎない、とさえ思います。


 一回り以上年下のYouTuberに教えられて、私も執筆を習慣化することにしました〜。『一行日記を書く』『最低週四日、25分間以上は小説を書く』『週三日は朝六時までに起きる』っていう誰にでもできそうなことを、習慣アプリを使って習慣化することに決めました。だってほら、まだ一月だから。やる気がある月だから。今後どうなるかわかりませんけど。


 小説を書くことも、お金を稼ぐという意味ではどんどん厳しくなってますが、自由に公開できる場ができたことで、より多くの方が気軽に楽しめるようになったのだと思います。

 

 なんだかいろいろ混ざったエッセイになってしまいました。ごめんなさい。なにはともあれ、今年も楽しく執筆続けて行きたいと思います〜。

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