第28話 書くことは考えるツール その2
先週のエッセイで、「小説を書いていると、自分の内面の深い部分がずる〜って出てくることがあります」みたいなことを書きました。
それに対して、無雲さんから
「まりこさんの作品って、恋人が居ながら実は本当に愛してるのは別の人、ってのが割と多いじゃないですか。そういうのもまりこさんの心情が反映されてるんですかね!?」
というコメントをいただきまして。
(無雲さん、勝手にコメント拝借してごめんなさい。いつもステキなコメントありがとうございます)
あの文脈だと、そう思われて然るべしだな、と反省しました。コメントに書かなくても、そう思われた読者さまもいたんじゃないかな〜っと思います。別に誰も気にしてないと思うんですけど、結婚しているので、ちゃんと訂正しといたほうがいいかなって、今回のエッセイのネタにさせていただきました。
私ったら、割とフツーな結婚してフツーな家庭を営んで、色気はないけど幸せな生活を送ってるんですよ。あっはっは。夫のことも大好きです。えへへ。
二年ちょっと前、ロックダウンのストレス解消のために、小説を書き始めたのですが、初めて書いたお話は、私の分身のような、フツーの既婚女性が主人公でした。
これが、ク○つまらなかったんですよ。そこそこ幸せな女性が、超絶細かいことでウダウダ悩んでる話で。普通の人の日常を魅力的に書くというのは、非常に高度な筆力を要するのですね。私には無理でした。
その時はじめて、小説として面白いお話には、普通にはちょっといないようなキャラや、普通にはちょっと起こらないようなドラマがいるんだな、と気づいたんです(個人の見解です)。
「恋人が居ながら実は本当に愛してるのは別の人」とか、もうそれだけでドラマが生まれるじゃないですか。「愛し合っているのに結ばれない二人」みたいなロミジュリ設定も。恋愛小説を書くときの定石みたいなもんなんですかねぇ。アマチュアが見よう見まねで小説書いてたら、そういう設定を多用してました、みたいな感じです。
なので、私の小説に不倫だとか裏切りだとか殺人だとか、「良い子はマネしちゃいけません」的な要素が入っているときは、ドラマを生むための舞台装置です。
まあ、だからといって、願望がまーったく反映されていないとも言い切れないんですけどね。……ゲフンゲフン。
恋をした瞬間のトキメキとか、付き合って最初の六ヶ月くらいのドキドキとか、もう二十年くらいないので、「また恋がしたいわ」なんて思わなくもないです。そういう願望を、執筆で妄想することで昇華している側面はあるかもしれないですね。うわ、イタい。
あと、当事者として涙があふれ出るくらい、何かに一生懸命になりたい。感動したい。みたいな願望もあります。今の日常がとっても穏やかなので。何かに全力を尽くして悔し泣きや嬉し泣きをする、みたいな胸熱ストーリーも書いて見たいですねぇ。
「自分がやってみたいことを、小説で疑似体験している」というのは、書くことの主要な動機ではないですが、側面としてはあるかもしれません。
じゃあ、私にとって「小説を書いていると内面が出てくる」とは、どういう意味なのか。
過去作を何個か読んでいて気づいたんですけど、「自分で作った檻の中に入っている人が、自らを解放する」みたいなテーマが多いなと。「自分らしく生きる」ということが、案外、自分には重要なのかなと思います。
裏を返せば、常識に囚われて不自由な自分、みたいなのを打開したい気持ちがあるのかもしれません。今の私は仮の姿で、本当の私はもっと違う人間かもしれない……みたいな、中二の変身願望みたいなのもあるかも(もう中年なのに)。
私の書く小説、登場人物がみんなすごく真面目なんですよねぇ。もうちょっと常識外れな人物を書きたいです。そういう人を書くことで、自分の内面も、少し柔軟になれるかもしれません。
そんな感じで、知らないうちに、自分の価値観や本音や性格なんかが、けっこうダダ漏れてるんですよ。直接的なストーリーラインよりも、キャラの性格とか、物語の落としどころとか、自分で意識してない部分に、より自分の本質が出てる気がします。こういうの、ありません?
追記:ちょっとだけ宣伝
「愛してるって言えない」
https://kakuyomu.jp/works/16817330648154771180
いろんな方のアドバイスのおかげで、なんとか自分で納得できる形で完結できました〜。短編って、パッと思いついて、ツルッと書けることが多いんですけど、今回は公募に出すぞって無駄な力が入っていたのか、何回も書き直してやっと書けました。
もう読んでくださった方。ステキなコメントの数々。身に余る評価。本当に励みになりました。ありがとうございます。未読の方は、よかったら覗いてみてください。1万3千字なので、10分くらいでサクッと読めますよ(笑)
追記その2
「小説現代長編新人賞」に出した作品、第一次選考に残っていましたが、残念ながら二次は落ちました。でも、かすりもしないだろうと思っていたので、一次だけでも通れてうれしかったです。一次に残った作品は136作品もあったのに、全部に講評がつきました。編集部のみなさまに感謝です。
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