第19話 世界は、脳内化学物質で変わるのか……な

 身近な人が、心の健康を害して入院してしまいました。入院する数日前にその人と話をしたのですが、不健康だなとはっきり感じるくらい、言動がおかしかったです。


「今日は天気いいですね」でも「お昼ご飯は食べました?」でも、何を言っても、超絶ネガティブな発言が返ってきました。 


 彼は「うれしい」「楽しい」「ありがたい」などの、ポジティブな感情が全く感じられないようで、逆に「自己嫌悪」「後悔」「不安」のような、気分が落ち込むような感情ばかり湧いてくるみたいでした。


 二時間ほど一緒に過ごした後、私までズーンと落ち込みました。彼と会話しただけの私ですらそうなので、本人はさぞ辛かろうと思います。

 

 もともと、あまり明るい人ではなかったのですが、独特のユーモアがあって、シニカルな性格なのだろうと思っていました。


 でも、こうなってみると、セロトニンやドーパミンなど、幸せ系のホルモンを出すレセプターみたいなものが、長いこと調子悪かったんじゃね? と思わなくもないです。(専門家じゃないので適当なこと言ってるだけです。すみません)


 同じ青空を見上げても、恋に落ちた日はキラキラ輝いて見えるだろうし、辛いことがあった日には今にも泣きそうに見えるかもしれないし、口内炎が痛いときには憎らしく見えたりするかもしれません。


 心身の状態で見える世界も違ったりもするので、メンタルヘルスなのか性格なのかって、なかなか線引きできないんじゃないか……と思ったりします。


「頭がいい、というのは、その人の特徴ではなくて状態です」と脳研究者の池谷祐二さんがおっしゃってたのを覚えているのですが、人柄や性格なんかも、案外、その人の特徴ではなくて状態なのかもしれません。


 入院した彼が回復して、彼の世界が少しでも生きやすい場所に変わるといいなと願うばかりです。


 話がちょっとズレますが、二年前に公開したエッセイに、最近になって、温かいコメントをいただいたんですよ。嬉しくて、キャッキャッと喜んでコメ返しました。


 そのついでに、二年前の自分はなに書いてたんだろうと、コメントいただいたエッセイを読んでみました。


 以前も同じような経緯で、だいぶ前に自分で書いた文を読んだことがあったのですが、「へ〜。私ったら、けっこうおもしろいこと書いてるじゃん」って悦に入って読み返しました(←これ、絶対みんなやるでしょ?)。


 でも今回は、自分の過去のエッセイを読んで、ちょっと引いてしまったんですよ。「このテンション高いおばさん、ウザ」って思いました。当時の熱量についていけない上に、ウケを狙ったであろう発言が寒い……。うへえ。


 昔書いたエッセイなんて、後から読み返してみたら恥ずかしいに決まっているのかもしれません。いやでも、もしかしたら、自分が思っている以上に、今の私は弱ってんのかなぁって、ちょっと思いました。


 心身の調子が悪いときって、「おいしい」「おもしろい」「楽しい」みたいなことを、感じにくくなったりしますよね。執筆中に「面白くない病」に罹患しても、気分転換して熟睡した後に読み返してみたら「イケるやん」と思えたり。


 同じエッセイでも、調子のいい日に読み返してみたら、案外大丈夫だったりするのかしら。今書いてるこのエッセイなんか、気分がハイなときに読み返してみると、逆に「うわー、陰気だな」って思うのかもしれません。どうだろう。


 自作か他人の作品かを問わず、同じ作品が、気分によって、おもしろかったり、つまらなかったりすることって、ありません?

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