第13話 世も末だ……という発想

質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A .20% B.40% C.60%


質問2 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A .約2倍になった B.あまり変わっていない C.半分になった


質問3 自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?

A .2倍以上になった B.あまり変わっていない C.半分以下になった


 回答はこちらです↓↓↓

(スクロールしてくださいませ〜)

















質問1 C.60%  質問2 C.半分になった  質問3 C.半分以下になった


 上記の質問は、「ファクトフルネス」という本の冒頭に出てきます。世界中でベストセラーになり、日本国内でも電子書籍などを合わせた累計で百万部以上売れたそうなので、読んだ方もいらっしゃるかもしれません。


 さて、このクイズを大学教授やジャーナリストなどに出題してみたところ、チンパンジーよりも回答率が低かったそうです。全部で12問ありますが、興味のある方はこちらへどうぞ(https://factquiz.chibicode.com/)。


 同著では「世界中の知識層が、現実を正確に捉えていない。現状を実際よりも、ずっと悪いと思い込んでいる」とあります。(注:ものすごく適当にハショッてます)


 なぜ、そんなことが起こるのか、「ファクトフルネス」ではたくさんの統計や実例を挙げて、説明されています。


 様々な理由が挙げられていて、それぞれ納得だったのですが、その中の一つに「ニュースというものの特性」がありました。


 そもそも、危険なことや悲惨なことなど、日常ではないことがニュースになるわけですよね。平和な毎日や、穏やかな進捗はニュースになりません。なので、ニュースを見ていると、現実を見る目が著しく偏ってしまうことがあります。


「悲惨な現状というものはニュースになるが、その状態が少しずつ改善されていく経過をメディアが取り上げることは、ほぼない」とこの本は語っています。


 それから、これも誰かの受け売りなんですけど、人間はどうしても、うまくいっていることよりも、問題点に注目してしまうそうです。例えば、百段ある階段の一段でも壊れていたら、大問題になると思いますが、残りの九十九段がきちんと作られているということは、誰も気にも留めません。問題点に敏感だというのは、生き残るために必要な能力だからかもしれません。


 なぜ「ファクトフルネス」の話をしているのかと言いますと、今月に読み終えて、非常に感銘を受けたからってのもありますが、近ごろ、ショックなニュースが多いじゃないですか。戦争、物価高騰、食料危機、洪水、銃殺事件……などなど。


 悲しいニュースが多いのは、今に始まったことでもないですが、ここ最近やたらと衝撃的で悲惨なニュースが多いなぁって思います。


 平和な日常はニュースになりません。世界的に、五歳以下の子どもの生存率は今では96%だそうですが、江戸時代の日本では75〜80%だったそうです。ということは、今日、五歳の誕生日をむかえる子どもが100人いたとして、そのうち20人くらいは、江戸時代だったら亡くなってたってことですよね。


 今日、それだけの子どもたちが、死なずに五歳の誕生日をむかえれたってことは、ニュースにならないんですよねぇ。


 何百万年もの間、人間はありとあらゆる悲惨なことと共存してきました。なので、「世も末だ……」とか「世界はどんどん悪い方へ向かっている」という発想になるのは、非常に自然なことなのでしょうね。調べていないのですが、きっと紀元前にもそういう記述が残っていそうです。


 ちょびっと検索したところ、日本では『周書異記』を根拠に釈迦入滅を紀元前949年として、1052年を末法元年とした……とあります(Wikipediaより)。「世も末だ……」どころか、もう千年近く前から、末の世だったのですね! うへぇ。


 ハルマゲドンのような、「世界が滅亡する日」の予想も、記録に残っているだけで何千個もあるらしいです。ってことは、それが全部当たってたら、今まで何千回もこの世界は滅亡してきたことになります。


 地球温暖化など、非常に深刻な問題は山積みですし、子どもたちが大人になったときに、この惑星は大丈夫なんだろうかとか、不安な気持ちになることもあります。


 でも、生まれて一度も空腹に苦しんだことがなく、清潔な水がいつでも手に入って、安全で快適な住居が確保されている、今の私の生活って、人類史上の快挙なんですよね。


 ネタが広がりすぎてしまって、まとまらなくなってしまいました(苦笑)。メルボルンは今冬で寒いんですが、暖房の効いた部屋で、暖かいお茶をお気に入りのマグで飲みつつ、Wi-Fiが機能しているパソコンで、こんなエッセイを書いている今の時間に、とりあえず「ありがとう」と言いたいです。


 みなさまも、どうかご自愛ください。


蛇足: 「ファクトフルネス」の共同著者であるハンス・ロスリングさん(2017年に他界)と、オーラ・ロスリングさん親子による、目からウロコのTEDトークはこちらです。日本語字幕付です。

https://youtu.be/Sm5xF-UYgdg

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