第3話 つまらない病にかかったら

 書き手のほとんどが罹患するといわれる「つまらない病」もしくは「おもしろくない病」に、かかったことがありますか?


 私は、一万字以上の作品を書くと、必ずかかります。初稿が書き終えた作品を、時間を置いてから読み返すときに一番かかりやすいです。


 今は、最近書いた長編を大幅リニューアルしている最中ですが、やはりかかりました。


 人によって症状にバリエーションがあるのだとは思うのですが、私の場合、自分が書いてる背後から、「それ、つまんねーよ」って言ってくる奴が現れます(写真はイメージです)。


 毎回、「つまんねーよ」さんが出て来るたびに、「キエエエエ! 去れ! 立ち去れ!」と塩撒きたくなりますが、たぶん、仲良くなったほうがいい奴なんですよね、「つまんねーよ」さん。


 今まで、「つまんねーよ」さんにコテンパンにやられて、最後まで書けなかった作品や、改稿できなかった作品がたくさんあります。なので、まだまだビギナーの私には、「自分がどんなにクソだと思う作品でも、とにかく最後まで書け」というどっかで聞いたマントラ(うろ覚え)は、現在進行形で非常に役に立っています。


 書いている途中で見切りをつけるのも、有効な選択肢だと思うのですが、今の私は、作品の完成度は度外視して、とりあえず最後まで書くことを目標にしています。


 小説を始めて二年弱、初心者のペーペーには変わらないのですが、少しずつ「つまんねーよ」さんと仲良くなってきました。


 以前は「それ、つまんねーよ」って背後から言われると、作品そのもの、ひいては自分自身が「つまんねーよ」って言われてる気がして、筆がピターッと止まってしまっていたんです。そのあと、作品自体をお蔵入りさせてきました。


 今回、改稿中に「つまんねーよ」さんが出てきたのですが、前よりはちょっと冷静です。つまんねーのは、作品全部ではないし、もちろん私という人間ではありません。誰がどう評価しようと、自分は「これはおもしろい!」とワクワクしながら書いた作品なので、どっか魅力があるはず。


 つまんねーのはどこなのか。なぜそう思うのか。描写なのか、構成なのか。説明部分が多すぎないか。主人公の動きや物語の展開が停滞していないか。余分なシーンがないか。キャラが多すぎないか。


 つまんねーよさんを、森でトリュフを見つけるときに連れてく豚のように、改稿のヒントを見つけるバディとして使うことにしてみました。なんかね、自分なりに「つまんねー」部分を嗅ぎ分ける臭覚みたいなものが、少しずつ発達してきたように思うんですよ。


「何が悪いのかわからないんだけど、このへんがどうもしっくりこない」とか、自作を読んでいて思うとき、ないです? つまんねーよさんといると、その感覚が少し鋭くなるような気がします。


 細かいところを直すのは比較的簡単ですが、設定や構成、キャラなど、大きな変更をするとなると、最初から書き直さないといけないので、頭髪が一瞬で真っ白になった心地がします。ふっ。


 でも、そこでめげずに、最後までやり遂げたら、きっと、もっといいものができると信じて、がんばります。今改稿中の作品を、七月末までには改稿を終えて公募に出したいと思っています。今回、最後まで改稿して予定通り公募に出せたら、「改稿のできない女」だった私をやっと卒業できます! 卒業できますように。


「つまらない病」にかかって、筆が止まったら、完璧を目指さないように気をつけています。自分なりに、自分ができる精一杯の作品を書いているつもりですが、それでもやっぱり、まだまだなんですよね〜。


 でも、これからまた何度でも改稿できるし、何作でも書けるのだから、ベストではなくベターを目標にしてます。「前より良くなったらオッケー」「七割できたらオッケー」みたいな感じで、ある程度で見切りをつけて次に進まないと、いつまでたっても終わりそうにないので(笑)。


「つまらない病にかかったんですけど、どうしたらいいっすかね〜」と、聞いてみたら、野々ちえさまより、大変すてきなお答えをいただきましたので、最後に紹介させていただきます。


「完璧を目指さない。大切ですよねー。物語も生きものですから、ほんとうの意味での完璧も完成もないのではないかと思ってます。


そして『つまらない病』は書きつづける限りついてまわる基礎疾患だと思っているので、ちょっと語弊があるかもしれませんが、わたしはわりと最初から、おもしろくなくていい。つまらなくてOK。と思うようにしてます。


たぶんわたしはエンタメ書きではなくて、人間とかその生きざまとかを深堀りしたいタイプなので、人生におもしろいもなにもないだろうという開きなおり。笑


つまらない人間のつまらない心理でも、そこを徹底的に書けたら誰かには届くかもしれないしー。みたいな感じです(ノ∀`*)」


 カクヨムって、作品を通して人と出会える特殊な場所ですが、こうやって、書き手さんの創作に対する姿勢のようなものを知ることができると、感慨もひとしおです。今回、野々ちえさんの回答で、どっきゅーんって、心臓を矢で射抜かれてしまいました♡


 おそらく、多くの人の心臓を射抜いてきた野々ちえさま、カクヨムのメルマガでも作品が紹介されていたので、リンクを貼っておきます〜:

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890609048


追記:「つまらない病」対策、他の書き手さんがどうやっていらっしゃるのか、とても興味があります。よかったら教えてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る