第30話 エピローグ 過去を超えた先と勘違い。
エピローグ 過去を超えた先と勘違い。
「なぁ、一緒にお昼どうだ?」
机に突っ伏していると、突如として湊に声をかけられる。
俺は顔をあげて、湊の方を見る。
「ああ……遠慮してお―っ⁉」
湊の後ろで、すごいこちらを凝視してくる松葉の姿が。
「お、俺は遠慮しておくよ……」
「そうか…」
少し残念そうな表情しながら、去っていく湊。
「ありがとね、水無月」
耳元で、そっとそんなお礼だけ残して、松葉も去っていく。
頑張れよ、松葉。
「そんなに、華のこと見つめてどうしたの? 何か言われた?」
「何で、ちょっと拗ねてるんだよ」
「別に~。私以外の女の子と仲良くするんだなぁって思っただけだし…」
頬を膨らませて、少し怒っている様子の夢風。
相変わらずのかまってちゃんである。
お前は俺の彼女かよ……。
「ってか、お前は湊たちと行かなくていいのか?」
「何で? 私別に、清に興味ないし、それに一緒に行ったら、華に悪いし」
「そうか。それもそうだな」
そう言い、俺は席を立つ。
「あれ? 水無月くん、どこ行くの?」
「お前も来るか?」
「え?」
俺は夢風を連れて、グラウンドを超えた先の旧校舎へと向かう。
そして、文芸部とかすれた文字で書いてある部室の前へ。
「何ここ」
「開ければ分かる」
俺はガラガラと扉を開けた。
その先には、一人佇む、神無月が。
「あら、来たの。いらっしゃい、私のぼっち城へ」
「今のお前は、ぼっちじゃないだろうが」
「へぇ~。紫苑が昼休み、教室にいないことがよくあるなって思ってたけど、ここにいたんだ」
「ええ、ここは静かでいいわよ」
「今更だけど、夢風と一緒に教室にいればいいんじゃないか? あえて、ここに来る意味あるのかよ」
「別にいいじゃない。私はここが好きなのよ」
「紫苑が好きなら、私も好きだな」
「なんて簡単なやつなんだ……」
「うん? 今何か言った?」
「うっ! お前、いきなり素の自分出すのやめろよ!」
「いやだって、ここなら、無理して猫被らなくても、よさそうだし」
「ま、まぁ、そうだけど…」
でも、ある意味、俺と神無月の前では、正直な自分を出してもいいっていう。
信用されてるって、とらえてもいいのかもしれない。
そう考えると少し嬉しい気もするな。
「そこら辺に座って」
「お、おう」
俺と夢風は適当な椅子に座る。
「で、今さらだけれど…私、まだあなたから謝罪の言葉を聞いていない気がする…」
「あっ、そういやそうだな」
「水無月くん? 別に無理して紫苑と仲直りする必要ないんだよ?」
「え?」
「だってそうすれば…紫苑は私だけの紫苑だし……水無月くんも―」
と、何かを言いかける夢風。
そんな夢風の言葉を遮るように神無月が言う。
「やっぱり今すぐ許してあげるわ。感謝しなさい」
「え? ええ?」
困惑する俺。
そんな俺を置いてけぼりにして、二人は見つめ合っている。
「えへへっ、紫苑ってば正直じゃないね」
「ええ、もちろんよ。でも、それは夢乃も同じね」
「え~? 私は…正直に言おうとしてるよ?」
なんだ? 何か様子がおかしくないか?
「ど、どうしたんだ?」
「あなたは…」
「水無月くんは…」
「気にしなくていいのよ」
「気にしなくていいの!」
二人して、声を揃えてそう言われたんだが。
俺は、何と返答すればいいのだろうか?
どう考えても、俺が何かやらかしたとしか思えないんだけど……。
「な、なぁ…神無月。教えてくれないか? お、俺…お前に嫌われたままなんて、辛すぎて死んじまうんだけど…」
「はぁ…別に誰も嫌ってないわよ。さっき許すって言ったでしょ?」
「ええ? で、でも……。そ、それに夢風も、せっかく最近、ちゃんと仲良くなれた気がするのに…前みたいにまた…」
「はぁ…別にそんなこと、もうしないよ…」
「本当にそうか?」
心配そうにしている俺に対して。
神無月は呆れたように答える。
夢風も呆れたように答える。
そして、再び、二人は声を揃えて……
「ねぇ、あなた……」
「やっぱりさ。水無月くん……」
「「私のこと好きでしょ?」」
私のこと好きでしょ。と勘違いしている女の子はどうすればいいですか? 水色 @mizuiroiro
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