明太子
関ヶ原サッカー中継
「さあ、始まりました。戦国カップ1600。今回は関ケ原スタジアムから生放送でお送りしております。実況はわたくし豊臣秀吉。解説は織田信長さんです。織田さん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さて、織田さん。今回のこの戦国カップ、どうご覧になっていますか」
「そうですね。個人的には、まさかまさか、といった感じですね」
「どういう意味でしょうか」
「今回私は本能寺戦で明智チームと戦ったわけですけれど、序盤は良い試合をしていたのに、まさか最後ああいったどんでん返し的な展開があるとは、まったく予想していなかったので、それも含めてこの戦国カップはなかなか波乱な展開になってきていると思いますね」
「確かにあの展開は衝撃的でしたね。会場もごく一部でブーイングが巻き起こっていました」
「炎上してましたね」
「今回の試合。徳川監督率いる東軍チームと、石田監督率いる西軍チームがぶつかります。この試合、織田さんはどうご覧になりますか」
「そうですね。徳川監督は権謀術数に長けた監督といった印象がありますね。待って待って、最後に大きな一撃を決める戦法ですかね。今回もそういった先を読んだ戦法で行くと思います」
「どちらかと言うと消極的な戦法だということでしょうか」
「いや、使い分けているという印象ですね。攻める時ももちろんあります。臨機応変に対応ができる、優れた監督だと、まあ個人的には悔しいのですが、言えると思います」
「では石田監督はどうでしょう」
「一言でいえば実直ですね。彼は頭は良いのですが、どちらかと言えば戦術タイプなので、先を読んで展開していくのは、徳川監督に比べて弱いポイントになると思います。視野が狭くなりがちなので、きちんと試合全体を見られていれば、勝利も夢じゃないと思いますね」
「そうですか。さて、両者にとって絶対に負けられない戦い。CMのあと、キックオフです」
「関ケ原スタジアムでお送りしております。戦国カップ1600。いよいよキックオフです」
(ホイッスルが鳴る)
「始まりました。まずは石田チーム。攻めますねえ」
「優勢です。ただキャプテン毛利の動き。気になりますね」
「試合開始から一歩も動いておりません。織田さん、これはどういうことでしょうか」
「どうなんでしょう。徳川の策略かもしれません」
「なるほど。戦いは試合の前に始まっていたというのか」
「そうかもしれませんね」
「おおっと。ここで、石田チームなにやら不穏な動きが」
「ちょっとおかしいですね」
「石田チームのフォア―ド小早川がボールを持っています。ん?小早川自陣へドリブルをしています。あれ、小早川どうした。自陣へ切り込んでいくぞ。おいおい、どうしたんだ。小早川どんどん石田チームを抜いていく」
「石田チームのディフェンスはほとんど動いていませんね」
「どういうことだ。小早川、どんどん抜いていく」
「おいおい、まさか」
「ここで、シュート!入るか?入るか?入ったー!小早川オウンゴール!」
「これはまさかの展開ですね」
「徳川監督、思わず笑みがこぼれます」
「石田監督は頭を抱えていますね」
「織田さん、これはどういうことでしょうか」
「おそらく、徳川監督が小早川と通じていたのでしょう」
「なるほど、策士ですね」
「狸ですよ」
「そのまま試合の流れは、徳川チームのものになっていく。おおっと、石田チーム、小早川以外の選手も自陣に切り込んでいく。パスを回して、またシュート!決まった!石田監督、膝から崩れ落ちる!ここで試合終了!徳川チーム、日本一になりました!」
(ホイッスルが鳴る)
「いやあ、織田さん、この試合どうご覧になりましたか」
「徳川監督の裏での動きが、この試合を決定づけたと言えるでしょうね。また、石田監督の人望という点もこの試合の敗因と言えるかもしれません」
「これで徳川チームは戦国カップチャンピオンになりました。戦国カップ1600、そろそろお別れのお時間です。織田さん、何か言い残したことはありますか」
「どうして俺たちが実況と解説をしなければならないんだ」
「まったくその通り。では次は、1614年、大坂でお会いしましょう。ありがとうございました」
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