さっさと叩き潰そう~ダーク視点~
カトリーナを連れ、馬車に乗り込む。久しぶりの外出に、目を輝かせて景色を見ているカトリーナ。でも、王宮が見えてくるにつれ、不安そうな顔に変わった。
「あの、ダーク様。王宮に向かっている様ですが…」
「ああ、そうだよ。でも大丈夫、僕がいるから心配しないで。君はただ、全てが終わるのを見守っていればいいんだよ」
ごめんね、カトリーナ。王宮なんて、二度と来たくなかったよね。でも、君の汚名を返上するためには、どうしても連れてくる必要があったんだ。そう伝えたいが、今はぐっと我慢する。
王宮に近づくにつれ、増々不安そうな顔をするカトリーナを抱きしめた。すると、カトリーナも僕に抱き着いてくる。よほど不安なんだろうな。でも、こうやって抱き着いてきてくれるのは、やっぱり嬉しい。
カトリーナからは、ほのかにラベンダーの香りがする。彼女が一番好きな花。ラベンダーの香りをかぐと、亡くなった母親の事を思い出して、温かい気持ちになれると昔教えてくれた。
ずっと独りぼっちだったカトリーナを、これからは僕が…僕だけがたっぷり愛情を注いであげたい。今まで愛情を注げなかった分までたっぷりと…そのためにも、今日の断罪は何が何でも成功させないと!
「さあ、王宮に着いたよ。僕が抱っこしてあげるから、安心して」
不安そうな顔のカトリーナを抱き上げ、馬車から降りる。
「さすがに王宮内で抱っこはマズいですわ。それに、万が一セリーヌお姉様に見られたら…」
「見られても構わないよ。あっ、でもあの女が逆上して君に攻撃を仕掛けると心配だね。まあ、そんな事をしたら、ただじゃ済まさないけれどね」
どうせあの女は断罪されるんだ。今更遠慮する必要は無い。万が一カトリーナに手を出そうとしたら、遠慮なく叩き潰そう。
「とにかく、カトリーナは何も心配する必要は無いよ。僕の腕の中にいたらいい。さあ、みんなが首を長くして待っている。急ごう」
急いで父上たちがいる大会議室へと向かう。大会議室に着くと、既に皆が席に付いていた。
「遅くなってしまい、申し訳ありません」
すかさず皆に頭を下げた。その時だった。
「なぜカトリーナがここにいるんだ。お前はグレッサ王国に提供したはずだぞ」
「そうよ。一体どういう事なの!それも、どうしてダークが抱っこしているのよ。あなたは私と婚約するのでしょう?」
バカな国王とセリーヌがギャーギャー騒いでいる。相変わらず、醜いな…
「陛下、カトリーナ王女の事は、後でお話しします。今日私たち貴族が集まったのには、理由があります。ここに、王妃様とセリーヌ王女、王太子殿下、さらに王妃様の実家でもあるフェブリット公爵家の悪事が記載された報告書を準備いたしました。まずはこれをご覧ください」
父上がすかさず資料を提出した。もちろん、貴族たちにも書類のコピーを渡す。
「これは…」
「王妃様と王太子殿下、さらにフェブリッド公爵は、あろう事か第二王子と第四王子、第三側妃の暗殺を企て、実際に実行したのです。さらに、第三王子の暗殺未遂事件も起こしております。これは、立派な犯罪です。他にも脱税、横領、恐喝など、王族や貴族としてはあるまじき行動の数々。さすがにこのままにはしておけません」
書類と一緒に、魔力を使って録音した音声や映像も流す。そこには、彼ら3人が、王子暗殺を指示している音声や、映像などが流れた。
「嘘よ、こんなのは嘘だわ。きっと公爵が捏造したのよ」
「そうだ、こんなの出鱈目だ」
王妃とフェブリッド公爵が真っ赤な顔をして嘆いている。
「ここまで鮮明な映像が残っているのに、どうやって捏造するのですか?捏造だと言うなら、その証拠を示していただけますか?」
「それは…」
冷静に対応する父上に対し、反論できない王妃とフェブリッド公爵。それはそうだろう。これは正真正銘、彼らを映し出した映像なのだから。
その時だった。カトリーナが急に小刻みに震えだした。一体どうしたんだ?
カトリーナの視線の先に目をやると、セリーヌが鬼のような顔でカトリーナを睨んでいた。あの女、最後までカトリーナを苦しませるなんて許せない。
震えるカトリーナを、ギュッと抱きしめた。そしてセリーヌの方を向く。
「私からも話をさせて下さい。セリーヌ王女は、カトリーナ王女に無実の罪を着せて命を奪おうとしました。その証拠もこちらにあります」
セリーヌが僕に計画を話していた映像や、地下牢での会話を証拠として提出した。
「僕はセリーヌ王女の作戦に乗るふりをし、カトリーナ王女を救い出しました。彼女は稀にみる魔力の持ち主。そんな彼女を無実の罪で追い出そうとするなんて!」
ギロリとセリーヌを睨みつけた。
「どうして?ダークは私が好きだったのではないの?どうしてこんな酷い事をするの?」
「僕が君を好きだった?君の頭は本当におめでたいんだね。僕はずっとカトリーナが好きだったんだ。カトリーナを守るために、そして君を地獄に叩き落すために、ずっと我慢していたんだ。でも、それも今日で終わりだ」
「あなた、私をだましていたの?私は王女よ。こんな事をして、ただで済むと思っているの?」
「ただで済まないのは、君の方だよ。セリーヌ王女」
僕たちの話しに入って来たのは、父上だ。
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