さあ反撃開始だ~ダーク視点~
無事カトリーナを奪い返すことに成功して以来、極力カトリーナの側で過ごしている。母上やミリアナもカトリーナを気遣っている様で、定期的にお茶に誘っている。
たまに楽しそうに中庭でお茶をしている3人の姿を見かける。正直カトリーナは僕にだけ笑顔を向けてくれていたらいい。そう思っていたが、やはり嬉しそうに話しをしているカトリーナを見たら、母上やミリアナと話すなとも言えない。
ずっと虐げられてきたカトリーナが、あんなにも嬉しそうに過ごしているのだから、ここはおおめ見る事にした。ただし、父上やジークには、近づかせないようにしている。
最近顔色も随分よくなって来たな。
スヤスヤとベッドで眠るカトリーナの頭を撫でる。今まで散々王宮で虐げられてきたカトリーナ。これからはこの公爵家で、幸せに暮らして欲しい。でもそのためには、やらなければいけない事がある。
カトリーナの頬に口づけを落とすと、静かに部屋を後にする。向かった先は、執務室だ。執務室に着くと、父上とジークが待っていた。
「カトリーナ殿の様子はどうだ?」
「ええ、スヤスヤと眠っていますよ」
「そうか、それならよかった。そうそう、早速カトリーナ殿の魔力を調べさせたのだが、あの子の魔力はかなり特殊な様だ。一度彼女自身を研究したいと、魔術師が言っているのだが…」
「これ以上カトリーナに辛い思いをさせたくはないので、お断りします」
「そう言うと思ったよ。まあ魔力の提供を行ってくれるだけでも、我が家には十分だ。それからダーク、カトリーナ殿は魔力量はもちろん、どうやら魔力の生成能力が異常に高いらしい。魔術師たちも驚いていたよ。はっきり言って、彼女が本気を出せば、我が国はもちろん、大国ですら滅ぼしてしまうほどの魔力量との事だ」
父上が興奮気味に話している。でも、僕にとってはどうでもいい話しだ。僕はただ、カトリーナが僕の側で笑っていてくれたら、それだけでいい。
「そんなにも義姉上の魔力は凄いのですか。本当に、今の国王は頭が悪すぎますね。国宝級の魔力を持っている義姉上をグレッサ王国に無償で提供しようとするなんて。これ以上バカな国王に、王政を任せておく訳にはいきません」
隣でジークが鼻息荒く父上に迫っている。確かに、これ以上あのバカ国王に好き勝手させる訳にはいかないな。
「それは私も重々承知している。国王だけでなく、王太子も負けず劣らず頭が弱い。それでダーク、王太子の調査結果はどうだったんだ?」
すかさず僕に話しを振って来る父上。
「もちろん調査済みです。さすがあの王妃の息子ですね。出るわ出るわ、悪事の数々」
父上に調査報告書を渡す。あんなどうしようもない人間たちが、王族としてのさばっていたと思うと虫唾が走る。
「さすがダークだ。よし、これで断罪が出来るな。そうそう、断罪前に1つ話しておかなくてはいけない事がある。次の国王だが、私は第三王子のグリムズ王子を推そうと思っている」
グリムズ王子か。彼の母親は伯爵令嬢と身分があまり高くないうえ、勉学武力共にかなり優れていた為、王妃から嫌われていたな。何度も毒殺されかかったため、精神を病み、母親の実家でもある伯爵領で療養中という事になっている。でも実は命を守るため、病んだことにして今も必死に勉強を続けている。
一時期我が公爵家で匿っていたこともあり、実は妹のミリアナとは恋仲なのだ。
「今更改めて言わなくても、分かっていますよ。それでミリアナとグリムズ王子の婚約は、どのタイミングで発表するおつもりですか?」
「ダーク、お前ミリアナとグリムズ王子の事を知っていたのか?」
「当たり前です。あれだけ屋敷内で堂々とイチャイチャしていたのですから、知らない方がおかしいでしょう。ねえ、ジーク」
「兄上の言う通りです。姉上は隠すつもりなど、毛頭ないと言った感じでしたよ」
「そうか…それなら話しは早いな。まあ、今の王政やフェブリット公爵家に不満を抱いている者も多いからな。あっさり断罪は出来るだろう。それで、断罪は3日後だ。よろしく頼む」
「「もちろんです」」
やっとあのにっくきセリーヌを断罪できる。3日後か、今から楽しみでたまらない。
そして3日後
我が家に協力してくれる貴族とグリムズ王子を呼んで、最後の作戦タイムだ。グリムズ王子の隣には、ミリアナもいる。
「今日はいよいよ、あの腐りきった王族を叩き潰し、以前の様に豊かで暮らしやすい国を目指すための戦いの日だ。グリムズ王子を国王にするべく、全力を尽くそう」
「皆の者、私の為に動いていただき、感謝している。どうか私と共に、新たな国を築いていこう」
父上とグリムズ王子が挨拶をした。その後、今日の流れを細かく皆に説明した。
「それじゃあ、王国に参りましょう」
皆で王国に向かうため、それぞれ部屋から出て行った。僕は急いでカトリーナの元へ向かう。僕が部屋に入ると、嬉しそうに飛んできた。あぁ、やっぱりカトリーナは可愛いな。
「カトリーナ、出掛ける準備は出来ているかい?」
「はい、出来ておりますわ。それで、今日はどこに出掛けるのですか?」
僕の髪によく似た黄色いドレスを身にまとったカトリーナが、コテンと首をかしげている。可愛いな…本当はあの醜い王族になんて、彼女を合わせたくはない。でも…
「すぐ近くだよ。さあ、行こう」
カトリーナの手を取り、急いで馬車へと向かう。ごめんね、カトリーナ。でも、今日が正念場だ。今日と言う日が終われば、僕たちは本当の意味で幸せになれるからね。
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