ざまあみろ~ダーク視点~
「皆様、今回これほどまでの悪事に手を染めていた王族やフェブリッド公爵家は、もちろん厳しい罰を与えるべきだと思います。そして陛下、あなた様の妻や子供たちが悪事に手を染めているにもかかわらず、見て見ぬふりをしていましたね。さらに第7王女でもあるカトリーナ王女は、稀にみる魔力の持ち主です。はっきり言って、国宝級。そんな彼女を、国から出そうとするなんて!これは立派な犯罪行為ですよ」
厳しい口調で国王に詰め寄る父上。他の貴族も、国王たちを睨みつけている。
「確かにお前の言う通り、私は王妃や子供たちの悪事を見て見ぬふりをしていた。でも、王妃に逆らう事が出来なかったんだ。だから…」
「言い訳は聞きたくはありません。とにかく、悪事に手を染めた王妃・王太子・セリーヌ王女、さらにフェブリッド公爵には厳しい罰を。もちろん、フェブリッド公爵家はお家取り潰しを。ここまで問題を大きくした元凶でもある陛下、あなたにも王位を返上してもらいます。そして新しい王には、グリムズ王子を推薦いたします。皆様はどうですか?」
「私は賛成です」
仲間の貴族が賛成の意を示した。それに続くか、そう思ったのだが…
「公爵、確かにグリムズ王子は、かつては聡明で誰よりも国王に向いておりました。でも、今は精神的に病んで、伯爵領で療養中と聞いております。そんなお方が、国王を勤め上げるなど厳しいのではないですか?それに、王都に戻って来て下さるかどうか…」
1人の貴族の疑問に、他の貴族も相槌を打っている。その時だった。
「僕ならここにいるよ」
絶妙なタイミングで部屋に入って来たのは、グリムズ王子とミリアナだ。きっと父上が無線で伝えたのだろう。
「皆の者、心配を掛けてすまなかった。僕はそこにいる王妃と王太子、さらにフェブリッド公爵に毒を何度も盛られ、これ以上王宮にいると殺される、そんな思いから、一旦領地に避難していた。そんな中カルーシャ公爵が、僕に手を差し伸べてくれたんだ。もちろん国王になるために、血の滲むような勉強も重ねて来た。確かに僕は経験や実績は乏しいかもしれない。でも、僕は誰よりもこの国を良くしたいと思っている。ミリアナと一緒に。だから、どうか僕を国王にして下さい。お願いします」
ミリアナと一緒に、深々と頭を下げるグリムズ王子。そんな姿を見た貴族たちが
「よくぞ元気に王宮に戻ってきてくださいました。一段とご立派になられて…私はあなた様にお仕え致します」
「私もです」
「「「「私たちも」」」」
一斉にグリムズ王子に頭を下げた。元々人望も厚く、他の貴族からも一目置かれていたのだから、元気な姿を見ればほとんどの貴族が彼に従うだろう。
「それでは、グリムズ王子が次の国王と言う事でよろしいですね」
「「「「もちろんです」」」」」
父上の呼びかけに、他の貴族も賛同する。
「ふざけないで!黙って聞いていれば好き勝手やって。そもそも、私は王妃なのよ。どうしてあんたたち貴族ごときにゴチャゴチャ言われないといけないのよ!もう許さないわ」
何を思ったのか頭がおかしくなった王妃が、グリムズ王子目掛け攻撃魔法を放った。それを見て王太子も攻撃魔法を放つ。さらに
「ダーク、あなたも許さないわよ。カトリーナを選ぶなんて!」
セリーヌまで僕たちに向かって攻撃魔法を掛けて来たのだ。本当に、頭の悪い親子だな…
カトリーナを強く抱きしめ、セリーヌ目掛け魔力を放出した。セリーヌは王族とは思えない程、魔力量が低い。かなり手加減したのだが
「ギャーーー」
悲鳴と共に吹き飛んでいく。隣ではグリムズ王子の反撃にあい、同じく悲鳴を上げながら吹き飛んでいく王妃と王太子の姿が。本当に、最後までどうしようもないクズどもだな。
ただ、グリムズ王子もかなり手加減をした様で、3人とも意識はある。
「なんて愚かな…」
さすがの国王も頭を抱えていた。
「この者たちを地下牢に連れていけ。念のため、魔力を無力化するリングを忘れるなよ」
「「「はっ」」」
父上の指示で、床に倒れている3人とフェブリット公爵が連行されていく。ただ…
「カトリーナ、全てあなたのせいよ…あなたさえいなければ…」
騎士に引きずられながら、それでもまだカトリーナに文句を言うセリーヌ。本当にこのクズは…カトリーナ、大丈夫かな?
心配になり、カトリーナの方を見ると、セリーヌを睨んでいた。彼女なりに思う事があるのだろう。
「カトリーナ、君はずっとあの女に苦しめられてきたんだ。言いたい事を言ってもいいんだよ」
僕の言葉に、一瞬目を大きく見開いたカトリーナ。すると
「セリーヌお姉様、私もお姉様が大嫌いです。お母様の命を奪った王妃様も。でも…私はお姉様と仲良くしたかった。ダーク様のお家で生活するようになって、ダーク様のお母様やミリアナと過ごすうちに、本当の家族の温もりを知りました。私は心のどこかで、お姉様ともこんな風に過ごせたら、そう思っていたのです。でも…その夢は叶いませんでした。もう二度と、お姉様に会う事はないでしょう。さようなら、お姉様」
ポロポロと涙を流すカトリーナを、そっと抱きしめた。そして連行されていくセリーヌを見送る。きっとセリーヌには、カトリーナの気持ちは伝わらないだろう。あの女はそういう女だから…
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