IFストーリー【ダーク&カトリーナ編】
ダーク様が助けに来てくれました
カトリーナとダークのIFストーリーです。もしカトリーナがグレッサ王国に旅立った時、ダークがカトリーナを奪還出来ていたら…
きっと2人の未来はこうなっていたのだろうと思って書いてみました。
ハリー達グレッサ王国の人間は全く出てきません。
ハリーとカトリーナのお話しを気に入ってくださっている方は、読まない事をお勧めいたします。
※第3話から話しが始まります
よろしくお願いします。
「さあ、出ろ」
看守に連れられ、地下牢から出された。魔力を放出していないためか、頭がぼーっとする。そのまま離宮でワンピースに着替えさせられ、馬車に乗せられた。もちろん、見送りなんてない。
ひっそりと走り出した馬車に揺られる。
ふと窓の外を見ると、住み慣れた王宮が目に入った。辛い事も多かったが、それでもお母様と過ごした大切な場所。
「お母様、行ってきます。もしかすると、すぐにお母様の元に向かうかもしれませんが」
そっとそう呟いた。気が付くと涙が溢れていた。誰からも必要とされない私。早くお母様に会いたい…そんな思いがあふれだす。
その時だった、急に馬車が停まったのだ。もう目的地に着いたの?さすがにそんな訳がないわよね。
不審に思っていると
「ウワァァァ」
外から悲鳴が聞こえた。もしかして、馬を操っている御者がやられたのかしら?盗賊か何かに襲われた?きっと私もここで殺されるのね。魔力を無力化するリングを付けているから、戦う事は無理だし。何より、頭がボーっとして、動く気力も残っていない…
次の瞬間、勢いよくドアが開いた。でもそこに立っていたのは、盗賊ではなく…
「カトリーナ、助けが遅くなってすまない!大丈夫かい?」
「ダーク様。どうしてあなたがここに?」
状況が全く理解できない。彼はセリーヌお姉様と一緒に私を陥れ、命を奪おうとしたのではなかったの?混乱する私をよそに、そのまま抱きかかられ、馬車から降ろされた。そして、別の馬車に乗せられた。
「可哀そうに、このリングのせいで、体が辛いんだね。すぐに楽にしてあげるから」
そのままリングを破壊してくれたダーク様。でも、まだ体の中で溢れ出そうとしている魔力が、私を苦しめる。
「ダーク様…これからどこに行くのですか?お姉様を愛しているのではないのですか?」
「今から公爵家に行くんだよ。君は予定通り、僕の妻として公爵家でずっと暮らすんだ。ごめんね、カトリーナ。あの女を欺くため、君に酷い事をした。でも、信じてほしい。僕が心から愛しているのは、カトリーナただ1人だ。実際まだ僕は、あの女と正式に婚約を結んでいないし、君との婚約破棄も行っていない」
私の方を真っすぐ見つめ、そう言い切ってくれたダーク様。詳しく話しを聞くと、私がこれ以上酷い目に合わないため、さらに公爵家を守るため、一旦お姉様の言う事を聞いていただけで、本当はダーク様はお姉様が嫌いとの事。
「本当にごめんね。カトリーナ。君を深く傷つけてしまった。とにかく、あの王妃とセリーヌだけは、叩き潰すから。君の母親の仇は、必ず僕が取るからね」
そう言うと、ギューッと抱きしめてくれた。お母様が亡くなってから、唯一私に優しくしてくれたダーク様。そのダーク様は、本当はお姉様が好きだったと聞かされ、生きる希望を失った。でも実際は、ダーク様は私を愛してくれていた。
その事実に、なんだか心の中が温かいもので包まれるような、そんな気持ちになった。
「ありがとうございます。ダーク様。私も、ダーク様をお慕いしておりますわ」
「ありがとう、カトリーナ。公爵家に着いたら、すぐに魔力を放出しよう。かなり辛そうだね。本当にごめん」
「いいえ、大丈夫ですわ。ダーク様が助けに来てくださったので。でも、私が行くはずだったグレッサ王国の方は大丈夫なのでしょうか?」
私の魔力を待っている王子様の事が気になった。
「ああ、それなら大丈夫だよ。魔力量が比較的多い人間を、君に見立てて送り出したから。相手は君の顔を知らないからね」
「まあ、私の身代わりになって頂いた方がいらっしゃるのですか?その方は大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。さあ、もう他国の事はいいだろう。公爵家に着いたよ。すぐに魔力を放出しよう」
私を抱きかかえ、そのまま訓練場に連れてきてくれたダーク様。早速魔力を放出する。ある程度放出したところで、やっと体が楽になった。
その時だった。
「噂には聞いていたが、さすがカトリーナ殿だ。すごい魔力だね」
後ろから男性の声が聞こえ振り向くと、そこにはダーク様のご両親が立っていた。数回お会いしたことがあるだけのお2人。きっと私は、ダーク様のご両親にも嫌われているのだろう。そう思っていたのだが…
「カトリーナ殿、今まで随分と苦労したね。でも、我が家に来たからにはもう大丈夫だ。安心して暮らしてくれ」
「そうよ、カトリーナさん。もうすぐあの王妃も王女も追い出す予定だから。私はあなたとお茶が出来るのを楽しみにしていたのよ。王宮での辛い過去は消えないでしょうが、これからは楽しい思い出をたくさん作っていきましょうね」
そう言ってほほ笑んでくれたダーク様のご両親。その優しい眼差しに、涙が溢れ出る。
「ありがとうございます。どうかこれから、よろしくお願いいたします」
溢れる涙を抑える事が出来ず、そのまま泣きながら頭を下げた。
「さあカトリーナ、魔力も放出したし、部屋に向かおうか。父上、母上、あまり彼女に近づかないで下さいね。それでは、失礼します」
そのまま私を抱きかかえ、歩き出したダーク様。ご両親はそんな私たちの姿を見て、笑っていた。さすがに恥ずかしいわ。
「ダーク様、もう自分で歩けます。ですから、下ろしてください」
さっきまでは魔力が体の中で暴れまわっていて、体がだるくて頭が回らなかったが、今は魔力を放出して元気だ。それなのに、抱っこされているなんて申し訳ない。そう思ったのだけれど…
「僕たちは婚約しているのだから、問題ないだろう?そもそも、今まではあの女のせいでカトリーナに触れられなかったんだ。今までの分を、しっかり取り戻さないとね。これからはずっと一緒だよ」
そう言うと、ダーク様が私の頬に口づけをした。一気に恥ずかしくなって、顔が赤くなるのがわかる。
「さあ、ここが君の部屋だよ。今までは稽古場で魔力を放出していたみたいだけれど、これからはこの壁に向かって魔力を放出するといい。この壁は特殊で、君の魔力を吸収してくれるんだ。これでわざわざ稽古場まで行かなくて済むだろう?」
ダーク様が案内してくれた部屋は、広くて大きい。それに、今壁に向かって魔力を放出しろと言ったわね。でも見た感じ、普通の壁に見えるけれど…
気になって壁に手を触れてみる。でも、特に何も感じない。試しに少しだけ魔力をぶつけてみる。すると、スーッと魔力が消えた。
「この壁は魔力を吸収できる壁なんだよ。この壁から吸収した魔力は、我が家の魔術師たちが研究に使わせてもらう予定なのだけれど、いいかな?」
「まあ、私の魔力をですか?それは嬉しいです。ぜひ使ってください」
無駄に多い私の魔力を活用してくれるなら大歓迎だ。
「ありがとう、カトリーナ。それから、基本的に何かあったら僕を頼って欲しい。ただ身の回りの事は、メイドに任せようと思っている。君の為に5人のメイドを付けたから、彼女たちに頼るといい」
「5人もですか?」
「ああ、そうだよ。君は次期公爵夫人だ。それでも少ないくらいだと思っているよ」
ふと入り口の方を見ると、5人のメイドが控えていた。今までメイドたちにも冷遇されていた為、どうしても身構えてしまう。
「カトリーナ、彼女たちは王宮のメイドたちみたいに、君に酷い対応をしないから大丈夫だよ。だから、遠慮なく彼女たちを頼って欲しい」
「わかりました。よろしくお願いします」
こうして私は、この日からダーク様の元で暮らすことになったのであった。
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