第28話 世界会議が行われる日を迎えました
王宮でパーティーを行った翌日から、護衛の数が増やされた。さらに魔術にも対応できる様、王宮魔術師からも1人、私の護衛にあたってくれている。
もちろんハリー様も、私の側を片時も離れようとはしない。寝る時も一緒だ。私をギューッと抱きしめて眠るハリー様。最初は緊張して眠れなかったが、そのうちハリー様の温もりがないと逆に寝られない程、慣れてしまった。
ただハリー様は第二王子だ。視察やらなんやらでお忙しいため、ずっと私の側にはいられない。その際は、なぜか魔術師塔に私を預けていく。
ただ、必ず女性魔術師に私を託していくのだ。特にラクレス様には近づかせない様、かなりきつめに伝えている。
確かに魔術師塔なら安心だけれど、ラクレス様はこの塔の中で一番偉い人。その人に近づかせるなと言うのは、無理がある。
実際ハリー様が出掛けた後、必ず私の元にやって来るラクレス様。そしてハリー様の魔力を感じると、さっとその場を後にするのだ。そのお陰でハリー様にはバレていないが、毎回“ラクレスとは会っていないよね?”と聞かれるのが苦痛でたまらない。
そんな日々を送っているうちに、いよいよ明日から世界会議が始まる。既に各国の王族たちが集まってきているとの事。ただ、離宮に皆泊まっているおかげか、まだ王族達には会っていない。もちろん、マレッティア王国の王族にもだ。
そもそも王族たちが入国して来てからは、ハリー様から部屋から極力出ない様に言われている。その為、魔石の製作も、今は自室で行っているのだ。
「カトリーナ、明日からいよいよ世界会議が始まる。その際、君を他の王族に紹介しないといけないが、俺がずっとそばに居るから安心して欲しい」
「はい、分かっていますわ。ハリー様がそばに居て下さるのですもの。何も不安などありません」
ただ挨拶をするだけ。きっと問題ないだろう。
「ありがとう、カトリーナ。さあ、今日は明日に備えて早く寝よう。おいで」
ハリー様と一緒にベッドに潜り込んだ。そして、いつもの様にギューッと抱きしめられる。この温もり、やっぱり落ち着くわ。
とにかく、明日の挨拶を乗り越えれば、もう私は会議に出る必要は無い。きっと大丈夫よ。きっと…
翌日
朝からメイドたちに体を磨いてもらい、ドレスに着替える。今日のドレスは、ハリー様の髪をイメージした、シルバーのドレスだ。さらにエメラルドの宝石があしらわれている。まさにハリー様色のドレス。宝石もエメラルドを付けてもらった。
「あぁ、今日のカトリーナもとても美しい。さあ、早速行こうか」
ハリー様にエスコートされ、今日の会議場所でもある、大会議室へと向かう。23の国の王族がやってくるため、かなり大きな会議室で行われるらしい。
会議室に入ると、既にたくさんの王族が集まっていた。私たちの姿を見つけると、お義父様とお義母様、お義兄様が来てくれた。
「カトリーナちゃん、そのドレス、とっても似合っているわ。ハリーが本当にごめんなさいね。どうしても自分の色を身につけさせたいと聞かなくて…」
このドレスをいつもの様にお義母様と選んでいる時、隣で見ていたハリー様が、どうしても自分の色でもある銀色と緑色を取り入れてほしいと言いだした。そのため、本来は青色のドレスをチョイスしていたのだけれど、急遽銀色のドレスに変わったという経緯がある。
「大丈夫ですわ。私もこのドレス、とても気に入っていますので」
その後しばらく皆で話しをした後
「さあ、そろそろ席に着こう」
お義父様に促され、早速席に着く。席は左から、お義兄様・お義父様・お義母様・私・ハリー様の順で座った。本来私が一番端なのだが、端にすると心配だと言う皆の希望を聞き入れ、急遽間に挟んでもらった。
ふと周りを見渡すと、マレッティア王国席には、国王と王妃様が座っていた。大丈夫よ、きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせた。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。では今から会議を始めます。と言っても、今日は簡単な自己紹介から。皆様もご存じだと思いますが、彼女がハリーの婚約者の、カトリーナです。どうぞお見知りおきを」
お義父様の紹介で、ハリー様と一緒に立ち上がり、頭を下げた。
その後は各国簡単な自己紹介をして、無事?1回目の会議が終わった。ちなみに会議は、1週間程度続くらしい。挨拶を終え、一旦王族たちは退場していく。私たちも他の王族に交じって退場した。すると
「カトリーナ、久しぶりだな。元気そうでよかった」
話しかけて来たのは、マレッティア王国の国王だ。
「お久しぶりです。マレッティア王国の国王陛下、王妃様」
軽く頭を下げた。隣でハリー様がかなり警戒した顔で2人を睨んでいる。その時だった。
「あら、カトリーナじゃない。元気にしていた?」
この声は…
ゆっくり振り向くと、そこにはセリーヌお姉様とダーク様の姿が。どうしてここにいるの?
「実はね。あなたの婚約者を一目見たくて、付いて来たの。あなた様がこの国の第二王子のハリー殿下ですね。初めまして、マレッティア王国の第6王女、セリーヌと申します。どうぞお見知りおきを」
そう言うと、ハリー様に触れようとしたお姉様。その瞬間、するりとお姉様をかわし、そのまま私の腰を抱いた。
「あなた様がセリーヌ王女でしたか。そうすると、そちらにいらっしゃるのが、あなた様の婚約者で公爵令息のダーク殿ですね」
ハリー様も美しいセリーヌお姉様を好きになったらどうしよう。そう思ったが…
「でもおかしいですね。今回は王族以外は参加できるはずですが?まあ、カトリーナの知り合いなら歓迎しましょう。それでは私たちはこれで失礼します。ゆっくりして行ってくださいね」
お姉様たちに軽く頭を下げ、私を連れてさっさとその場を後にした。
「あの女が俺の可愛いカトリーナを傷つけ、苦しめ続けた女か!見ているだけで虫唾が走る。まさか図々しく付いて来るなんて」
「あの、ハリー様はセリーヌお姉様を見ても、何とも思わなかったのですか?」
「虫唾が走るほどの嫌悪感を抱いたよ。それにしても、あのダークとかいう男、カトリーナをずっと見ていたな。もしかしてあの男、カトリーナの事を…」
「それはないです。そもそも、あの人はずっとセリーヌお姉様が好きだったのですから」
「そうなのかい?まあいい、とにかく、カトリーナは会議が終わるまで、部屋から出てはいけないよ。わかったね」
「はい、分かっています」
まさかセリーヌお姉様まで来ていたなんて。なんだか急に不安になってきた…
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