第27話 どうしてあいつが!~セリーヌ視点~

「お父様、お母様、一体どういう事ですの?カトリーナが、グレッサ王国の第二王子と婚約しただなんて!」


カトリーナは私の2つ下で、男爵令嬢が生んだ異母妹だ。私は子供の頃から、あの女が大っ嫌いだった。魔力量がやたら多いからといって、兄弟姉妹の中でも一目置かれていた。


それがずっと気に入らなかった。もちろん、お母様もだ。最初はちやほやされていたが、この国ではお父様よりお母様の方が、実質発言力がある。その為、お母様に嫌われたらどうなるか、みんな知っているのだ。


それを利用し、まずあの親子を孤立させた。さらに母親でもある男爵令嬢を毒殺。そしてついでにあの女も始末しようとしたのに、あの女、毒も効かないしどんな凄腕の暗殺者を雇っても、秒殺で倒してしまう。


本当に怪物みたいな女なのだ。さらに私のお気に入りだった公爵令息、ダークとの婚約まで決まった。もちろん抗議をしたわ。でも、一度婚約を結んでしまうと、さすがにそう簡単には婚約破棄は出来ないらしい。


そこで私は、ダークと協力して、カトリーナに無実の罪を着せ、グレッサ王国に送ったのに…


魔力を吸い取られ、苦しみながら息絶えるカトリーナを想像し、毎日幸せな日々をおくっていたのに!まさかあの女、第二王子の病気を治しただけでなく、婚約者に納まるなんて!


悔しくてたまらない。


「ねえあなた。カトリーナは我が国の王女よ。我が国の許可なく婚約するなんてと、抗議できないのかしら?」


「それは無理だ…カトリーナはあの国に送るとき、この国の王女と言う身分を捨てて向かわせたんだ。それに何より、大国グレッサ王国に意見するなど、最悪この国が滅ぼされてもおかしくはない」


「そうよね…いくら何でも、グレッサ王国に意見するなんて、そんな事は出来ないわよね。セリーヌ、あなたは念願だった公爵令息のダークと婚約できたのだから、もうあんな女の事はどうでもいいでしょう?とにかく、グレッサ王国を敵に回す事なんてできないわ」


お母様までも、そんな事を言っている。確かにグレッサ王国といえば、この地域では一番力を持った国。あの国が本気を出せば、家の国なんて、秒殺で滅ぼされるだろう。


でも…


どうしてもカトリーナが、グレッサ王国の第二王子と結婚する事が許せない!そもそも、私の方がずっと美しいし、教養もあるのに…


「もう!どうすればいいのよ!!」


怒りから近くにあったものを、壁に向かって投げ捨てた。



「随分と荒れているね。一体どうしたんだい?」


「あら、ダーク。来ていたの?聞いてよ、カトリーナの奴、グレッサ王国の第二王子と婚約したそうよ!腹が立つと思わない?」


カトリーナの元婚約者で、今は私の婚約者でもあるダークに愚痴を言った。


「セリーヌ、それは本当なのかい?カトリーナが、クレッサ王国の第二王子と婚約したという事は!」


「ええ、本当よ。各王族にお達しがあったのだもの」


「そんな…」


なぜか真っ青な顔をして固まるダーク。


「ちょっとダーク、あなたがどうしてショックを受けるのよ!」


「イヤ…別にショックを受けていないよ。ねえ、セリーヌ。カトリーナがあの大国、グレッサ王国の第二王子と婚約なんて、おかしいと思わないかい?君の方がずっと綺麗なのに」


「さすがダーク。よくわかっているわね。そうよ、おかしいわよ!そもそも私の方が、第二王子の婚約者にふさわしいはずだわ!」


「そうだね。僕もそう思うよ。ねえ、知ってる?今度グレッサ王国で、王族たちが集まって会議が開かれることを。その会議に、君も付いて行くといい。王族の君なら、一緒に付いて行っても問題ないと思うよ。そこで、カトリーナから第二王子を奪ってやればいいんだよ」


「でも、そんな事をしたら、あなたはどうするの?」


「僕は君が一番大切だからね。君が幸せになれるなら、喜んで身を引くよ。ただ、どんな男か見ておきたいから、僕も一緒にグレッサ王国に付いて行ってもいいかな?」


「もちろんよ!あぁ、あなたは本当に優しいのね。そうと決まれば、早速お父様とお母様にその旨を伝えてくるわ」


「ああ、頼んだよ。でも、カトリーナからグレッサ王国の第二王子を奪いに行くなんて、口が裂けても言ってはダメだよ。そうだな、せっかくだから、僕とグレッサ王国を見学したいとでも伝えるといい」


さすがダーク。賢いわね。


「わかったわ。早速お父様とお母様に伝えてくるわ。ありがとう、ダーク」


その後両親から、一緒に行ってもいいと言う許可を得た。これでグレッサ王国の第二王子は私のものね。待っていなさい、カトリーナ。あなたなんて、絶対に幸せになれないんだから!

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