第25話 またあの女性が現れました

挨拶が終わった後は、それぞれ自由に過ごす。私とハリー様はと言うと、貴族たちに挨拶をして回る。会う人合う人


「ハリー殿下も、ついに運命の方を見つけられたのですね。それにしても、カトリーナ様は殿下に愛されていて羨ましいですわ」


「カトリーナ殿は、魔力量が非常に多いとお聞きしました。ハリー殿下の病気を治しただけでなく、魔石の開発や増産にも貢献されていると聞きましたよ。本当に素晴らしいですな」


など、ハリー様の溺愛っぷりを羨ましがられる声や、私の魔力を絶賛する声なども聞こえて来た。どうやらかなり歓迎されている様で、ホッとした。


ふとグラス様が目に入った。いつもは執事の格好をしているが、今日はスーツを着ている。


「グラスは元々侯爵家の次男なんだ。だからこういう場所では、侯爵令息として、パーティーに参加しているんだよ」


そうハリー様が教えてくれた。


その後も貴族たちに挨拶に回ったり、ダンスをしたりして過ごす。


「カトリーナ、さすがに疲れただろう。今日は中庭がライトアップされているんだ。せっかくだから、休憩がてら見に行こう」


「はい、是非見たいですわ」


ハリー様と一緒に、中庭へと向かう。昼間にしか来た事がなかったので、夜の中庭はまた新鮮だ。ハリー様が言った通り、あちこちに灯りが灯され、とても美しい。


「ハリー様、あちらはもっと綺麗ですわよ」


あまりの美しさに、どんどん奥へと進んでいく。


「カトリーナ、あまり奥まで行くと、灯りが灯されていないよ。さあ、このくらいにしておこう」


ハリー様にエスコートされ、ベンチに腰を掛ける。すかさず一緒に来てくれていたメイドが、飲み物を渡してくれた。


「こうやってライトアップされている中庭で、飲み物を頂くのもまたいいですわね。なんだか新鮮ですわ」


「そうだね。俺はこうやってカトリーナと2人きりになれたのが、一番嬉しいけれどね」


そう言うと、私の唇に自分の唇を重ねたハリー様。


「もう、おやめください。メイドや護衛騎士もいるのですよ」


「何を恥ずかしがっているんだい?さっき皆の前でもしたじゃないか」


そう言ってクスクス笑っている。もう、あの時は本当に恥ずかしかったのだから!そう抗議をしたいが、嬉しそうに笑っているハリー様を見ていたら、そんな事は言えなかった。


その時だった、1人の執事が、私たちの元にやって来たのだ。


「ハリー殿下、陛下がお呼びです。至急大ホールにお戻りください」


「俺をかい?わかったよ。さあ、カトリーナ。戻ろうか?」


「殿下のみ来てほしいとの事ですが…」


「なんだって。どうしてカトリーナがいてはまずいんだ!さあ、カトリーナも一緒においで」


私の手を掴み、歩き出そうとするハリー様。執事も困り顔だ。


「ハリー様、私はもう少しここにいてから戻りますわ。近くにメイドも護衛騎士もおりますので。それにここは王宮内ですので、安全なはずです」


「そうか…わかったよ。それじゃあお前たち、カトリーナを頼んだよ」


「「「「はい、かしこまりました」」」」」


それでも心配そうなハリー様を見送り、再びベンチに腰を下ろす。すると


「カトリーナ様。お久しぶりです。さあ、私と一緒に帰りましょう」


目の前に現れたのは、以前私を連れ去ろうとした女性だ。どうしてこの人がここにいるの?メイドや護衛騎士たちは?


周りを見渡すが、皆倒れていた。嘘でしょう…


「あの…あなたは一体誰なのですか?帰るとは、マレッティア王国にですか?あの方とは誰なのですか?」


「私はあの方に雇われた者です。そうです、マレッティア王国に帰るのです。あの方のことは、話せない事になっておりますので…申し訳ございません。でも、あなた様もよく知っていらっしゃる方ですよ。さあ、帰りましょう。早くしないと、王子が戻ってきます」


私の腕を掴み、連れて行こうとする女性。もちろん、ついて行く訳には行かない。


「止めて、離して」


一気に魔力を彼女にぶつけた。


「キャァァァ!!」


かなり手加減したのだが、それでも吹き飛ばされ、その場に倒れこんでしまった。ちょっとやりすぎたかしら?そう思ったのだが…


「…さすがですね。でも、私もあなた様を連れて帰らないと、あの方に叱られますので…どうか、私と共に…」


フラフラとこちらにやって来る女性。その時だった。


「あの女を捕まえろ!!」


この声は、ハリー様だわ。


「ハリー様!」


急いでハリー様の元に向かい、そのまま飛びついた。


「カトリーナ、すまない。あの執事も、どうやらグルだった様だ。俺が父上のところに向かった隙に、どこかに逃げてしまった。今王宮内を捜索しているところだ」


「私は大丈夫です。それよりあの女性…」


ふと後ろを振り向くと、女性の姿がない。あら?どこにいったのかしら?


「申し訳ございません、殿下。あの女、かなりの魔力持ちの様で、魔力で姿をくらませた様です」


「何をしているんだ!すぐに魔術師塔に行って、ラクレスを呼び、あいつらを捜索させろ!」


「かしこまりました」


魔力で姿をくらわせたのね。そういえば、鍛え抜かれた護衛騎士たちがやられていた。彼らは武力はもちろん、それなりに魔力を持ち合わせているはずなのに。そんな彼らを倒したという事は、やはり魔力量が多いのだろう。


「クソ、護衛騎士までやられているではないか!そのうえ一度ならず二度までも、カトリーナが狙われるなんて!!それもパーティーの日に」


怒りからか、美しい顔が歪んでいる。


「ハリー様、落ち着いて下さい。私はこの通り大丈夫ですわ。確かに彼女は魔力量は多い様ですが、私程ではありません。現に、私の攻撃で吹っ飛んでいきましたので。そもそも私は最強なので、どんな刺客が現れても大丈夫ですわ」


にっこり笑ってそう伝えたのだが…


「君が強いのは知っている。でも、それとこれとは話しは別だ。とにかく、極力俺と一緒にいる事。いいね、分かったね。さあ、今日はもう部屋に戻ろう!」


そう言うと、私を抱きかかえ歩き始めたハリー様。せっかくのパーティーが、なんだか波乱のパーティーになってしまったわね…

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