第2話 通りゃんせ--エピローグ--
ホテルに帰り着いた風花はその後、友人の偽装工作もあって、何とか抜け出した事も学校側にバレずに済み、無事修学旅行最終日を迎えた。
自由時間には友人達とお土産を買い漁り、記念写真も撮った。
ご当地スイーツに舌鼓し、気力も充実した後に、満足感の中帰りのバスへと乗り込んだ。
走行中のバスの中、隣の窓際に座っていた友人の明美が外を見ながら口を開く。
「あれ?」
その声に反応し風花が、
「なに?どうしたの?」
と聞き返す。
すると明美は首を捻りながらううん、と唸った。
明美の視線の先、それはあの伏見稲荷神社だった。
「知ってる風花?伏見稲荷神社にはあちこちに小さな狐の像があるの」
「狐の像?」
明美の言葉に風花は更に聞き返す。
「うん。白狐(びゃっこ)って言うらしいんだけど、それがあちこちに置いてあって、口に何か加えてるのよ、玉とか帯とか」
明美は得意げに答えるが、だんだんとその表情が曇り出す。
「へえ気付かなかった……で?それで何で明美が悩んでんの?」
「鍵がないのよ……」
「鍵……」
明美のその言葉に、風花は思わず昨夜の事を思い返した。
金色の狐、あの少年に渡された雅な鍵。
「さっき見たらあの狐の像がなくてさ……ほら、昨日写メも撮ったんだよ!」
そう言って明美はスマホの画面を風花に突きつけてきた。
そこには、鍵を加え、道着を身にまとった小狐の像が映し出されている。
「君だったのか……」
風花は呟くように言うと、愛おしそうな眼差しで人差し指を立て、そっと画面の白狐を優しく撫でた。
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