挿話 ■■■■の記憶




霞む視界の中で、父と母が涙を流しながら姉に縋りついてた


どうして、どうしてあんたまで


あいつのせいだ、あいつがいたから、この子まで


「は、」


笑いたかったけど息がしづらくて、空気が漏れただけだった

またわたしのせいか。危ないって言われてたのに、廃墟なんかで遊んだのは姉なのに


あんたと遊んであげるのなんて、あたしだけなんだから


巻き込まれていい迷惑だ。あの醜悪な顔、両親は見たこともないのだろう


でも悪いことは全部わたしのせい。まあ、もう慣れてるけど


ごぼりと口から血があふれてくるのに、もう何も感じない

死ぬのだとわかった。初めてではない。何度目かなんて忘れてしまった、潰れたのは初めてかも、いや、前も同じように死んだかもしれない、どうだったかな


全てが黒に染まる前の最後の瞬間、目に映ったのは憎悪だった



――――お前だけ死ねばよかったのに



それが父と母にかけられた最期の言葉だった



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