挿話 ■■の記憶




今日も雨が降らなかった

畑はとっくに干からびて、川も枯れてなんにもない


ずっとずっと雨が降らない

えらいひとは神様のお使いに水をもらえるけど、わたしたちはもらえない


全部わたしが悪いの


クマに襲われたわたしを庇ってお父さんが死んじゃった


一緒に遊んでたら木が倒れて隣の子が死んじゃった


悪いことは全部わたしのせいなの


お母さんもみんなそういってるから、きっとそうなの


わたしが呪われてるから、わるいの



ごめんなさい


お前のせいだ!お前が生まれてから悪いことばかり!


ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい


あんたなんか生まなきゃよかった


ごめんなさい、わたしがわるいの、あやまるから、つぐなうから、なんでもするから、だから



――――わたしのこと、ころさないで




「死んじまえこの疫病神!!!」



命が流れ出していく。真っ赤に染まって動くことも出来ないのに、刃は何度も、何度も、何度も何度も何度も、息絶えてただの肉塊になるまで振り下ろされ続けた




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