第82話 ここまでです。
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3人組のベテラン工作員だった。多くのミッションを難なくこなす、この3人組にこなせないミッションはないとさえ思われていた。そんな3人の元に彼らの名声を不動にするはずのミッションが発動された。
『ラ―スロ公国第三皇女シルヴェ―ヌの拉致』
しかも実行場所は『スパイ天国』と謡われた日本。護衛に銃器はなく『イ―ジ―』な仕事のはずだった。気を抜いた――
そんなつもりはなかった、などと言ってもそれは言い訳に過ぎない。何故なら彼らの仕事を妨害したのはただの『高校生』しかもひとりだ。まったくの素人に妨害され、撃退された。
しかし、未遂の終わったのは結果論だ。それは日本のとある高校生の善意に過ぎない。現実はもちろん、それだけでは済まなかった。
自国の『皇女拉致未遂事件』に指をくわえて見ているほどラ―スロ公国ヌルくはない。徹底した報復を敢行した。
そのひとつが
流石にこれには
『面目』を重視する
ご存じの通り『モザイク・ミスト』は記録媒体に干渉する技術。映像や写真には『モザイク』が掛かったように見え、個人を特定困難にする。
しかし『パタ―ン』が解析されてしまった現状中友連邦の『モザイク・ミスト』容易に解析出来る。
その上『
戦犯と化して元『
現状撃退出来ているが、補給線の無い戦場。物量で押し寄せてくる『元同僚たち』を退けた続けるのも限界に近づいていた。
残された手は、そう多くはない。失敗に終わった『ラ―スロ公国第三皇女シルヴェ―ヌの拉致』を再度敢行するか――
潔く死を選ぶか……何にしても、第三皇女シルヴェ―ヌが接触を持つ可能性がある『斎藤順一』をマ―クすれば、あわよくばと彼の登校途上に網を張っていたのだが……三崎栞の機転により回避された。
(焼きが回ったか……)
『うみねこ』のリ―ダ。通り名は『フロウ』彼は長年『
それもあり、通り名が『
(どうも…相性が悪い……)
そう感じていた。何と相性が悪いのか……それは普通の高校生である『斎藤順一』に対してだ。
妨害を受けた恨みがある訳ではなかった。あれもこれも、時の運というものだ。彼は他人事のように自分のことを突き放して見るところがあった。
(時の運に見放されたか……)
斎藤順一が登校で使うはずのバス停周辺でフロウはため息を飲み込んだ。
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「―で、どうする気だ? まさか斎藤を殺す気か?」
成宮は自分の置かれた立場が、事務長と林田に逆らえないことを悟った。下手に逆らえば――
事実かどうかわからないが『娘の薬科大』合格が『裏口合格』だと
自暴自棄――そこまでではないものの、破滅願望的は思考がない訳じゃない。だから『斎藤を殺すのか』そんは発言になった。もちろん冗談のつもりだったのだが……
「事務長。カントク、意外に話がわかりますね。残り時間が少ないので助かりますよ、カントク」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……本気じゃないよな?」
「本気ですよ、どうしてですか? 聞いたでしょ? 我々は懲戒解雇になるんですよ。しかも、既に警察に被害届が出されている。わかりませんが、早ければ午後にはお縄です」
「どちらにしても、我々は最高の狩場を取り上げられるんですから――それなりの報復を覚悟して貰わないと、割が合わないと申しましょうか……ですよね、事務長?」
そう言って事務長はバラバラと、机の中にあったあるものを取り出した。
そこには黒光りするナックルが付いた『ハンドガ―ド・ナイフ』と背にギザギザとしたセレ―ション刃のある『サバイバル・ナイフ』木製のハンドルの『飛び出しナイフ』が雑に置かれた。
「お好きなのをどうぞ」
にこやかな笑顔を浮かべる事務長に成宮は『ざわり』とした。林田にもだ。ヘラヘラと笑みを浮かべ『サバイバル・ナイフ』を手に取り自分の頬をナイフのブレイドでペタペタと叩いた。
「事務長、これは何の冗談だ……」
「知りませんか? 未成年者との淫らな行為……我々の場合強制わいせつ罪にあたる物もチラホラあります。下手すれば10年近くは出て来れない場合もあるそうで……10年ですよ?」
「おかしくないですか? 人を殺したわけでもないのに……なのでどうせ10年出て来れないなら、人――殺しちゃいませんか。斎藤順一と妹、舞美。それから三崎栞。この辺りを?」
「待ってくれ、仮に10年喰らったとしても、ちゃんと罪を償えば――な…うぅ…!?」
成宮の言葉はそこで途切れた。月並みではあるが焼けるような痛みが彼の横腹に走る。慌てて押さえた脇腹はぬるりとした、嫌な温もりが……
「林田……なんのつもりだ?」
「保険ですよ、ほ・け・ん!!『娘の裏口入学』も保険だし、カントクの口封じも保険!! もうね、後ないんですたら! どうせならイクとこまでイキましょうよ、まあ、カントクはここまでだけど……と!」
そう言って林田は脇腹に刺したサバイバル・ナイフをぐるりと一回転させ、絶命までのカウントダウンを短縮させた。その光景を事務長はニヤリとして眺めていた。
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