第61話 こんな関係の考察。

「契約成立ですね、では…手付け代わりに……脱いだらいいですか?」


「手付けってなんの!? 脱ぐって…実際は脱がないとして……もし、もしもですよ? ど、どの範囲で脱がれるつもりかだけ聞きたいなぁ…後学のために」


 オレはつい『脱ぐ』というキ―ワ―ドに反応してしまった。緊張したせいでめちゃくちゃ早口だ。


「質問に質問で返して恐縮なんですが、この場合の『脱ぐ』はやっぱりに脱ぐなんでしょうか。それとも、伝家の宝刀と名高いがよろしいんてしょうか? チラリズムって一歩間違えたら、何勿体もったいぶってんだ、になりませんか? でも一気だと、みたいな…あっ、コイツ遊び慣れてるな、とか」


「なるほど…難しいですね。でも僕はそのちょっと勿体もったいぶられるっての悪くないと思います。正直好きですよ、たぶんそういうの」


「なるほどです。あと…また質問なんですけど、前提で恐縮なんですけど、? って思ったりです。その…下からなのか、上からなのか。どうお考えです? 順一さまの個人的見解をお聞かせ願いたいのですが…」


「個人的にですか、そうですね。僕は断然『下』派ですね」

「それはアレですか、一気に? モロな感じですか?」


「そこはですね、例えばスカ―トなら…そうそう、スカ―トならこう…『すとん』みたいな? 下に落とす感じは外せませんね、憧れちゃいます。それで上はそのままがなんか、いいです。パンツが見えそうで見えないみたいな? あと…恥を偲んで言うとするなら――」

「はい…」


「ジェシカさんに組み伏せられた時、その…ジェシカさんのスカ―トの中。黒いパンストに白いパンツ…僕的にはまさにこれは黄金比です、誤解を恐れずに言うなら『高校男子の憧れ』です、間違いなく!」


「その……私はですね、順一さまに対しては特別な感情はありません。それはもない、という意味です。正確にはが持てる、いいひとだなぁ。街で偶然出会ったらお茶とか、食事とか、ショッピングとかしてもいいなぁ、くらいの立ち位置をです。順一さまはどうですか、あなたの中で私は?」


「あっ、僕もまったく同じですね。特に急ぎじゃない用事なら後回しにして、ご一緒したいなぁは、あります。あと、見かけても気付かないフリはしませんね」


「なるほど…ではですね、普通にふたりと仮定しますね。もし、このようなふたりが一足飛びの関係になったら、どうなんでしょう? 一足飛びとは――はじめに言いました『脱いだり』とかなんですけど」


「どうなんでしょう…それって『勢い』ってヤツなんでしょうか」


「難しいですね。あの質問の方向性が少しの変わるのですけど『勢い』で『そういった関係』になろうとする時って、やっぱり何らかの興味が、そこにあると思うんです。相手に対して」


「そうですね『そういう関係』になってもいいかなぁ? みたいなことですよね?」


「それで『そういう関係』なってもいいかなぁの中に、相手へのイメ―ジってあるの思うんです」


「私ってきっとセクシ―路線に見られるだろうなぁって。パンツはティ―バックとか紐パンだとか。あと黒い透けレ―スだとか―」


「でも実際は結構普通の履いてまして。黒いとか持ってなかったりで。黒いスカ―トだと白は透けるかなぁって、紺色にするのが精々」


「基本白ぽいのが多くて、際どいデザインとか全然。あっ、これ別に『清純派』アピってんじゃないです」


「こういうのどうなんでしょう『ギャップ萌え』とかありふれた、決めつけじゃなくて、実際はギャップじゃないんです。その自分がかわいいなぁって思えるのが、淡い色だったりで」


「わかります。でも、やっぱり今の聞いてなかったら、ジェシカさんのこと僕もセクシ―路線だと思ってたし、聞く前に見て『ギャップ萌え』なんて無責任に思ってた。でも回避出来たわけですよね、思い込みを」


「そうしたら、その先のが変わるんでしょうか」


「変わりますね、絶対。つまりは見た目はやっぱりセクシ―系だけど、中身と言いますか、ジェシカさんの好みを知っているとなると、僕の立ち位置は『幼馴染』に近いものになると思います。そこそこ私生活を知ってるというか……まぁ、幼馴染が下着の色までは知らないかなぁ」


「なるほど…ここに来て幼馴染ですか。順一さまは思った以上に私の本質をご存知な感じ……あっ、これが『私のこと』わかってくれてる感じ、安心感になるんですね」


「あの……ここに来て実践的か要素を挟みたいんですけど。そんな私のことをわかっててくれる、順一さまになったわけです。私も順一さまをわかってて、認めてもいる」


「でも、やっぱり。そんなふたりが一線を越えるというか、そういう関係になろうとする時。やっぱり緊張するわけですよね、相手の本質をわかり合っているふたりでも。いえ、そんなふたりだからこそ」


「はい。少し違いますが、夏休みの登校日。暑いな、ダルいな、そんな気分の教室で――いるわけですよ、そんな『えっ、このふたりが!? 今かよ!』みたいな想定外の組合せ!」 


「そういうのって、でもそれは周りがを知らないだけで、ふたりの間では少し意外かもだけど『周り』ほどじゃないって言うか」


「とはいえ、近い存在のふたりでも、緊張はするわけです、いやもしかしたら、他の組み合わせより緊張するかも」


「なんか、こう…いいですね。でもほら、そんなふたりの? してみませんか? 私、今ブラウスで。その下はキャミを着てまして。いきなりブラとかじゃないです……」


「周りから見たらが夏休み、女子のブラウスのボタンを外すところまできた、やってみたくないですか。幼馴染ではあるものの、お隣とかじゃない幼馴染」


「やりたいです。そのジェシカさんのブラウスのボタン外すところ……幼馴染だけど、学校ではそこまで知られてない関係の!」


「注意点ですが、ご存知の通り初々しいふたりです。順一さまは私の胸にうっかりでも触らないように、細心の注意をする感じで」


「ジェシカさんは僕のたどたどしく、震える指先をじっと見てるわけですね」

「はい。その…どうぞ」

「あっ、どうょ…もう緊張してきた」


「どうしましょう…順一さまが私のブラウスのボタンをふたつも…凄く勝手なことを申し上げますと、先程想定しました『夏休み』的なのと、私の中であるじに対しての――」


「ジェシカさんは、それは…エッチです」


「順一さまだって…私が変な気になってるの知りながら…ブラウスのボタン外しきったじゃないですか!」


「3つ目からこなれた感じで――本来…この先はどうなるのでしょう…キスですか…? それとも優しくソファ―に行ったり…」


「たぶんですが」


「あの…この『シチュエ―ション・ト―ク』なんかすごく、楽しいです。えっと…順一さまは?」


「僕もです。その意識してなかったふたりが、ひと夏で特別に…とか最高ですね……ちょっと距離感のある幼馴染」


「ワガママですけど…このちょっとだけ話するクラスメ―トであり、幼馴染の距離感って維持できますか?」


「それって…」

「あの…順一さまがよろしければ、私のお休みの日に、また別の『シチュエーション・ト―ク』したいです。その…妄想なふたりの没入感――クセになりました…」


 そう話すジェシカさんの外したブラウスのボタンを、オレはひとつひとつは元通りにする。オレの指先を見るジェシカさんの視線を感じながら。






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