第50話 ふたりの秘事。
はっきり言って三崎栞はポンコツである。スト―カ―だし、自虐的だし。でも、だからこそ人間味があって魅力もある。完璧なんて少なくともオレは求めていないし、ポンコツはポンコツで一緒にいて楽しい。
それに『スト―カ―』は全部が全部いいとは言わない。嫌がってる人や、悪質なのを肯定してるわけではない。
だけど、自分自身――栞の真っ直ぐなところや、自己犠牲というか時に自分より大切に出来るものがある人は尊敬出来るし、共感出来る。
純粋だし、オレの家族や仲間を大事にしてくれるし、仲間も家族も栞を同じように大事にしている。
胸のサイズにコンプレックスを持っているところ。黙っていたら間違いなく学校を代表するくらいの美人だし、鼻にかけるところなんてない。時に人のために我を忘れた怒ったり、損得なしに尽くしたり。
とにかく人としての魅力に溢れる人物なんだ。ここまで、いいかな? えっと、うまく理解出来なかったらもう1度言いますけど、大丈夫ですか?
そんな人として尊敬出来る栞さんにオレは部屋の隅、本棚の陰に連れて行かれた。因みに扉から死角になる場所で、栞は胸に抱いたボストンバッグのファスナ―を正座して開いたとこだ。
「えっと……これがそうなんです」
そう言われても、どうなんですって感じだ。オレも栞にと同じように正座して膝を突合した。膝同士がくっつく位の距離だ。
「これは…」
「えっと、さっき約束してくれましたよね『また触るから…洗濯しろ』って。だからコレ」
栞は色とりどりのブラだの、パンツだのをあろうことかオレの膝の上に広げた。ホント、あろうことかだよ。
色とりどりとは言ったが、どぎつい色合いのものはなく、どれもパステル調で、大人しめの刺繍が施されていて、なんて言うか『栞ぽい』ものばかりだった。ここはとっても好感が持てた。
確かに言った。オレが……栞の入浴中に脱衣室でこれから着けるだろうブラに触れた。それを栞は記念に『洗わずに着け続ける』宣言したものだから――また、触るから洗濯しょうぜ!的な!
社交辞令って実際どうなんだろ、本音と建前的でなんか嫌かも……今朝までのオレは確実にそう思っていた。なんていうか、そういう意味のないことに対しての反抗? そんな感じ。
でも、わかった。オレ、大人になった。大事だわ、本音と建前。だってさぁ…ブラ洗わずに着け続けるって言ってんだよ? 普通に考えて『肌、
だから建前としての『ブラ。また触るから』なんだけど? またって今なの? スト―カ―さんの『また』は『ナウ』なの? しかも栞さんたら、満面の笑顔よ。
さっき長々と語ったの『ここ』で活きてくるから。栞は人として尊敬出来るし、美人で真っ直ぐで、思いやりある。だからさぁ…
普通で考えてくれ! 触りたいよ! 高校男子だもの! いや、そもそも論。栞に対してもめっちゃ好意あるからね!
言ったよな、舞美以外で現状呼び捨て栞だけだって! そんな子だよ? オレにとって…触りたい以前に見ただけでも心臓バクバクだから!
目の前こんな可愛いし娘のブラやパンツが本人推奨で触れるとなると、触るでしょ? いや、触るっしょ!!
「ごめんなさい、やっばし。ばっちいですよね、ホント空気読めなくて」
「その違う…」
「斉藤君、そんな気を使わなくて全然です! いつものことですよ、なんて言うかな、調子乗って勝手に凹んで…だから平気です、片付けないと…」
三崎栞はオレ専属のスト―カ―だ。しょっちゅう勝手に、アクセルベタ踏みして、我に戻って落ち込んで。自分の恥ずかしいところは、お構いなく晒して――でも、それだからか信用出来て。守りたいとか、背中を任せれるとか思うわけで。だからそんな栞にばっか恥かかせられないというか…
「さっきさぁ、脱衣室でこっそり触ったのは、この辺かな」
「えっと…ブラの外側ですか」
「なんていうか、お前の目を盗んで。バレたけど」
「そうですよ、バレバレですよ。もっとバレないようにしなきゃ。私じゃなかったら、ギリ犯罪ですよ?」
「大丈夫」
「いや、大丈夫じゃないです、ギリ犯罪だって!」
「いや、お前のしか触んないし」
「えっ? またまた、そんな気使わなくたって……ホントに? その、からかってたり…?」
「してない。してないけど、今のところ、な?」
「あっ、誰の触る気ですか? って言うか、目の前の触ってくんないんですか? 洗ってますよ、汚くないですよ?」
「あのさ…本人見てる前で触れると思う? これって新品じゃないんだろ? つまりは何回もお前がしたやつだよな?」
「そうですよ、本人見てる前って言いますけど、中々こんな機会ないですよ? こう見えて現役JKですよ! 斉藤君、今触らないと10年後お金出して、触ることになりますけど? それより…男子ってこういうの興奮するんですか? ど、どんな感じで触るか参考までに」
「えっ? マジなヤツ? 今するヤツ!?」
「マジ今なヤツです」
「その…まず、ブラだけど…」
「待ってください。どんな妄想しながらかも付け加えてください」
「わかった。知らねぇぞ『もうやめて!』ってオレの手からブラ取り上げる結果になっても」
「えっ? そんなに私のこと…そのエロい目で!? あっ…どうしよ、何か癒やされてきた。わたし…旅立っちゃうかもです。虚空の彼方に―」
何かわからないまま、互いに羞恥プレ―をすることになった『舞美にこっそり…』で始めた栞の下着の『おさわり会』だが……マジで言えねぇし、何か癖になりそうだ。
そんなわけで、栞はとってもいいヤツだ。
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