第33話 前へ、前へ。
夜も更けて来た。オレたちにとって明日が初めて私立
退学になって数日、戦いの主戦場はあくまでもネット上。情報戦だった。舞美の頑張りのお陰で有利に状況を運んでいる。
ネット上での優勢は揺るぎないだろう。ネット民にとって私立
あと、舞美にコアなファンが増殖中だ。うれしい反面、兄としては心配だ。
元々こちらから出した情報に対して『被せる』やり口だった。こちらからの発信は続けているが、舞美のガチなフォロワ―により半端な
(どの面下げて『オレたちに任せてくれ』なんて言ったやら……まぁ、どうでもいいけど)
「情報を整理したい。直近で動きがありそうなこと、こちらから仕掛けることに絞ります。
「校長、
「事務長、
「ふたりの情報はこんなところ。警察情報だと数回に渡り校長及び学年主任が居留守を使ってる。どうも、事務長が遮断してるみたいね。気になること――事務長の
「はい。それは日常的に」
「そう…じゃあ、あなたも日常的にスト―キングされてたみたい。斎藤君の後をつけるあなたをつける、事務長が目撃されてる」
「えっ、じゃあ斎藤君の退学…私のせい」
「誰もそんなこと言ってない。横恋慕って表現が正しいかわかんないけど、そんなことまで責任持てないから気にしない。それでいいわね、斎藤君?」
「もちろんです」
「えっと、ちょっとばっかしウチのクル―が無茶した。女子弓道部の部室で回収してきたのが『これ』盗撮の動かぬ証拠ね」
浅倉さんは証拠品として、袋に入れた家庭用のビデオカメラをテ―ブルに置く。
「設置する時に事務長の顔が写り込んでる。三崎さんが回収した感じで警察に提出したら――お縄ね。ウチのクル―が不法侵入したのは内緒ね? このビデオカメラの扱いは三崎さんに一任していい? 斎藤君」
「はい。じゃあ、
「あっ、はい!」
浅倉さんはさらっと話すが、十分とんでもないことだ。栞は気丈に返事するが、覗きにショックを受けている。当たり前だ。ありがたいことに、母さんが寄り添ってくれている。
「知り得てるのはこんなとこ。あとニセのホ―ムペ―ジとフェイク記事作った。うちらクル―は
「校長にアポ取れたんですね?」
「簡単よ。だって明日昼には文部科学大臣のパフォ―マンス来校があるから。支持率急落中だから、厳重注意みたいな演出しなきゃね。詰まんないね、政治家は」
「面と向かって打ち合わせ出来る最後の機会だから、最終確認します。浅倉さんとクル―の皆さんはこれより、ウチを出ます。さすがに明日ここから
「了解。斎藤君、政府から明日点数稼ぎに『副大臣級』がココに来るわ。目的は同じ支持率回復のため。斎藤兄妹を総理官邸に招いて取り込み工作『自分たちが解決したぞ、アピ―ル』どうするの? それ受けたらその先の計画進めにくい。でも断り方次第で不必要な敵作るわ」
「浅倉さん。私、手を打ってます」
「舞美ちゃんが?」
「はい。動画で最近体調不良だからって発信してます」
「体調不良?」
「はい。体調悪い舞美を置いて家離れられないって言い訳します。そこを『副大臣級』が強引に来たら、ネット民の反感買うでしょ?」
「な―るほど。ウソはシンプルな方がいいね。舞美ちゃんが体調崩してるから玄関先だけの対応もおかしくないし……」
「なので、オレと栞は明日は基本待機です。舞美は仮病。家でのメディア対応は父さんと母さんに」
そしてオレが1番気になっていたふたりに話し掛けた。
「シルさん。ジェシカさん。大使館に戻ってください。本国に政府専用機で官房長官が向かってるってニュ―スが。ここにいるのは、かしこい選択じゃない」
突き放すような言い方しか出来ない、自分の力不足を嘆いても仕方ない。前に進まないと。オレは自分に言い聞かせた。前へ前へ、だ。
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