第22話 女神様のサポート
「ティーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「ちっ、クソ鳥が…!ふざけんな!!」
強面男は体にできた、浅い引っかき傷をみて悪態をついているが今はそんなことどうでもいい。
なんということだ!ティーが飛んでいってしまった!!あんな小さな体で、強面男の太い腕に直撃して無事で済むのだろうか…!
どうしよう。ティーが大怪我したら…死んじゃったら!俺が情けないばっかりに…!ティーが…!
「ティー!!ティー!!大丈夫かーーーー!!!誰か、誰か…!」
『ぴゅ~~~…』
「!!」
良かった!なんか結構遠い気がするけど、声は聞こえる!!はやくティーを探してやらないと…!!!
「ティー!」
何度ももがいてティーのいる方向へ行こうとするが、腕を拘束されていて動けない。
「てめえはいい加減、大人しくしろ!!」
「…いっ…た…!」
必死でもがいていると、強面男に掴まれている腕が捻りあげられる。かなりの力だ。痛すぎて涙が滲んでくる。
「~~~~っ!いた…痛い!!」
「痛えのが嫌なら黙ってついてこいっつってんだよ!!」
「…っ!…い…いやだ…」
抵抗しなければと思うが情けない声しか出ないし、間近で怒鳴られたせいで体が委縮する。
もと居た世界だって、ここまで怒鳴られた経験がない。怖い。顔怖い。足が竦んで力が入らない。
でも抵抗を諦める訳にはいかない。けど、パニックで頭が真っ白だ。怖い顔を見たくなくて強面男から視線を逸らす。
…と。
なにあれ。
恐怖を忘れて、森から空へと聳え立つ異様なものを見入ってしまう。そのせいで、強面男に引き摺られるように転んでしまった。
「ちぃっ!はやく立て!立てっつってんだろうが!」
「……」
俺は空を見上げたまま、それから目を離すことができない。
なんだろ、あれ。自分でも頭がおかしいと思うんだけど。あれ、なんかこう…すごく馴染みのあるものに見えるんだ。多分向こうの世界では誰もが一度は、いや、それ以上に見たことがあると思うアレ。
すごい勢いで近付いてきてるんだ。
グー○ルマップのピンが。目的地ここだよ~ってやつ。
「くそっ、こいつ頭でもイカれちまったのか?」
強面男は、俺を引き摺っていくのを諦めたのか体を屈める。肩に担ぐつもりかもしれない。
あ、ちょっと邪魔。あのピン何か書いてるんだよ。もう少しで読めそう…。
読めた!!
『この方は頼りになります。きっと実さんを助けてくれるでしょう。 by女神』
俺はすかさず目一杯の大声で叫んだ。
「助けて~~~~~~~~!!!!!!!ここ!!!ここでーーーーーす!!!こっち!!」
「ぐわぁ!…クソが…!」
突然の大声に強面男が片手で耳を抑えて顔を歪めている。担ぐ為に屈んでいたのでダイレクトに効いたらしい。そのまま手を放してくれてもよかったのに。
助けてくれる人が近くまで来ていると分かった途端、心の余裕が少し戻ってきたので、あともうちょっと頑張って抵抗を続けてみようとしていたら。
「てめえ…もう許さねえ…」
あれ、強面男の様子が変だ。もしかして、助けを呼んだの…嘘だと思ってる?
「…っあんた、こんなことしてる場合じゃないんだからな!すっごい頼りになる人がそこまで来てるんだぞ!」
会ったこともないから、どんな人かは分からないけど、女神様の言葉を借りて脅してみる。
「なかなかの上玉だからな…ちったぁ大目に見てやってたのによぉ…」
強面男が腕を振り上げた。
嘘だろ!今まで我慢してたじゃん!何で急に瞬間湯沸かし器!?
殴られる。俺は反射的にギュッと目を閉じる。
「ぐがぁ!!!」
自分のものじゃない悲鳴に驚いて目を開けると、強面男が腕を抑えているところだった。何が起こったのか分からないけど掴まれていた腕が自由になっていたので、強面男から離れなければ。
「くそ、何だ?待ちやがれ!」
「うわわ!来るな!」
逃げるために背を向けようとしたときだった。
視界の端から黒髪の男が飛び込んできた。途端に強面男が倒れた。
「え…?え?何?」
困惑している間にも黒髪の男は、慣れた手つきで強面男の手足を縛っていく。これはプロの技だ。すごい。何が起こったか全然分からなかったけど、強面男を秒で倒したみたいだ。武器を使ったようには見えなかったんだけどなぁ…。しかもイケメン。…嫉妬する気も起きないレベルの。
黙って観察していると、黒髪イケメンと目が合った。
「怪我はないだろうか?私は冒険者のランスという」
あっという間に作業を終えた黒髪イケメンは、綺麗な姿勢で自己紹介してくれた。けどそれよりも。
「………す、すごい!どうやったんですか!?」
あ、しまった。自己紹介されたのに興味が先走ってしまった。ここはひとつ、仕切り直さねば。ランスさんが、きょとんとした顔でこちらを見ている。
「あー、えと…すみません。俺はみの…いや、リッカです」
すると、ランスさんがニコッと笑いながら「いや、構わない」と答えた。紳士か。
「先程のことが気になるという話だったな。君が腕を掴まれているとき、そこの男の腕に石を投げた」
「…当たるんですね」
俺だったら最悪被害者に当たるか、明後日の方向に投げてるわ…。
「次に、おそらくリッカ嬢を人質に取るつもりだったのだろう。相手はまだ私を捕捉していなかったので、その間に接近して顎を掌底で打った」
「おお…」
り…リッカ嬢って呼ばれた。紳士だ。掌底打ちの達人紳士だ。
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