第91話 08月21日【1】
「……暑いわね」
「うん」
「どうして私、ここに居るのかしら…」
「今更なに言ってんの。発案者が参加しないなんて、おかしいでしょーが」
モデルのイベント当日。集合場所の駅前で、私と共に残るメンバーを待っていた
当初、
「自分は背が高くないから」「モデルなんてやったことがないから」と
にも関わらず待ち合わせに一番乗りするあたり、責任感の強い彼女らしい。
念のため今朝は私も早めに家を出たのだが、約束の30分以上前にも関わらず、
「……というか、なんで私が車も出さないといけないのよ」
「仕方ないでしょーよ。僕の車じゃ5人も乗ったらすし詰め状態になっちゃうよ。って言っても…」
口籠もりながら、私はすぐ傍のコインパーキングを見やった。視線の先にあるのは、2シーターの真っ赤なスポーツカー。
「なんで二人乗り?」
「仕方ないでしょ!」
顔を赤らめ、
キラキラと輝くようなスポーツカーの隣には、乗り古した私の普通乗用車が並んでいる。なんだか、差を見せつけられた気がする。
そうこうする間に、
「皆さん、今日はお忙しい中、本当にありがとうございます」
皆が集まったと同時、お嬢ちゃんが平身低頭に挨拶をした。
ゆっくりと頭を上げたお嬢ちゃんは、そのまま
「あの……はじめまして
恐縮を全身に表しながら、言葉噛みつつお嬢ちゃんはまた頭を下げた。
そんな彼女に、
「そう硬くならないでください。改めまして
大人を感じさせる
「それじゃあ皆、車に乗って下さい」
と、私が声を掛けた途端。4人は一様に顔を見合わせた。
「
「はい」
「誰が、どちらの車に乗るんです?」
「……」
けたたましい蝉の鳴き声が、静寂の空に木霊する。
※※※
結局、私の車には
目的地は予め伝えられていたが、念のため
正直に言うと、私はこの移動中の車内が非常に不安だった。
あちらに乗車している
不安を抱えながら私は運転席に乗り込み、二人を後部座席に乗せて発進した……その数分後。
「じ、事務長!
「だって
「あ、
「なんであんな所に!?」
「事務長! 信号が黄色に変わりました!」
「いや、もう無理だよ…」
「というか、ここ制限速度50kmですよね?」
「そうですね…」
などと
おかげで目的地のシオンモールに到着した頃には、我々は既にグロッキー状態だった。
「どうしたのよ3人とも。まさか車酔い?」
もはや言い返す気力も無い。
「あ、皆さん。あちらです」
乱暴な
冷房の効いた建物内に入ると、お嬢ちゃんの先輩と
「皆さん、今日はお越し下さりありがとうございます。無理なお願いをお引き受け頂き、感謝いたします」
恭しく頭を下げると、女性は嬉しそうに「美人揃いね、やるじゃない」とお嬢ちゃんに耳打ちした。
お嬢ちゃんは照れ臭そうに笑った。
※※※
女性陣は衣装合わせのために、スタッフ通用口の向こうにある控室へ向かった。私は一足先に会場へと赴く。
会場と言っても、そこはモール内の吹き抜け広場に簡易なステージが設営されただけのもの。
おまけに先輩が個人で開いたイベントではなく、いくつかの企業や事務所が協賛しているらしい。
並べられたパイプ椅子には既に数名の客が陣取っていた。私も前の席で開始を待つ。
そうして、約2時間後。
イベントは順調に進み、会場は徐々に観客らで溢れるようになった。
100脚ほど並んでいるパイプ椅子はとうに満席となっていた。立ち見の客まで居る。
司会進行のお姉さんが、アナウンスを行う。
とうとう、お嬢ちゃん達の出番が回ってきた。
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いつも拙作をご覧くださり、誠にありがとうございます。
この謎文字列も早いもので90話超となりました。
これほどに話が続けられているのも、御覧下さる皆様の御陰です。
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