第30話 04月17日【3】
「お、お嬢ちゃん…」
仕事で使う玩具を
突然の登場に私はもちろん驚いているが、そんな私を見つめるお嬢ちゃんもまた驚愕の様相を
「お、お疲れ様です…」
「う、うん。おつかれ…」
お互いに何を喋って良いのかも分からず、妙な沈黙が辺りを包む。
「あ、
いつの間にかトイレに行っていたらしい
「貴女………〈つがみ小児科〉の…」
「は、はい! 事務の
噛みながらも、お嬢ちゃんは丁寧にお辞儀を返す。
恐る恐ると顔を上げたお嬢ちゃんは、上目遣いに私と
「あの……お二人は、その……お付き合い、されてるんですか?」
「え?」「へ?」
今度は私と
「そ、そ、そんなワケないじゃない! 誰がこんな男と!」
叫びながら
確かにその通りだが、そんなに強く否定しなくも良いだろう。いや誰が『こんな男』だ、失礼な。
「そ、そうなんですか?」
「当然よ! 今日はただ
今度は私の両手にある玩具屋の袋を指し示した。それに合わせ私も袋を持ち上げてみせる。
「僕も病院に置く玩具をね。ただ一人で買いにくるのは恥ずかしいから
「あっ、昨日壊れた
「そうそう」
二度続けて頷くと、お嬢ちゃんの表情から驚きと
「ち、
腕組みした
「前にお会いした時に、
「あ、そういうこと」
顔を
「それに
「あ、あら? お上手ね。そんなお世辞言っても何も出ないわよ? それに、貴女だってとても可愛いじゃない」
謙遜しながらも、
「ところで、貴女は恋人とお約束かしら?」
「――っ!?」
今度は私が
よくもまあ、そんな堂々と
「そんなにも若くて可愛いのだから、良い
「い、いえ全然! わたし、中学からずっと女子高で、今まで男の人とお付き合いもしたことなくて…」
「――っ!?」
お嬢ちゃんが必死に手と首を振る姿を目にした私の脳内には、教会のベルが鳴り響き天使が舞い踊った。
まさかこうもアッサリと
「あら、そうなの? 私もよ!?」
叫ぶように答えた
「中高一貫の私立高だったから。周りはずっと女ばかりで」
「あ、私もですっ」
言葉を交わすにつれて二人の表情がみるみる明るく、声も高くなっていくのが見て取れる。
「ちなみに大学はどちら?」
「
「あら、優秀ね」
「そんな。薬剤師の先生に比べたら全然です」
謙虚な姿勢を崩さないお嬢ちゃんに、
「ところで貴女、いま時間はあるかしら?」
「あ、はい。少しなら」
「もっと貴女と話をしたいわ。良ければあそこの和風カフェでお茶でも如何? ここで会ったのも何かの縁だし、奢ってさしあげるわ」
「え、良いんですか? 嬉しいですっ」
「いくらでも好きなものを注文なさい。そこにいる医者の息子がなんでも御馳走するから」
さも当然のように言うと、
「……え、僕が奢るの?」
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