第14話 03月19日
「超可愛いんですけど!」
明くる日の土曜日。午前診が終わって他の
「なにあの笑顔! 天使か! 天使が舞い降りたのか!」
「……良かったですね」
高揚する私に反して、
「しかし、彼女が仕事で長続きしないのも分かる気がします」
「え、なんで?」
院内の電気を消しながら、私は敢えて過剰に首を傾げた。
「可愛すぎます」
目の下に
「あれだけの器量です。今の事務長みたいに男性にはモテ
「そんなことある?」
「あります。それに彼女は大人しい性格のようですし、おべっかやゴマスリが出来るタイプにも見えません」
セキュリティロックをかけ内側の扉を施錠し、電動シャッターが降りたのを見届け、私達は事務所へ向かった。
「でも、それならウチには安心だね。そんな意地の悪い人は居ないから。ちょっとキツイこと言われる時はあるけど」
「楽観的ですね」
「信頼してるんだよ。特に、
薄い溜め息を吐く
疲れているのだろうか。明日と明後日は休みだから、ゆっくり静養してほしい。
「じゃあ、お疲れ様。
「あ……はい…」
ペコリと会釈して
まだ仕事を残していた私は、休憩室のキッチンで紅茶を淹れるため湯を沸かしていた。
すると、その時。
「事務長………今、いいですか?」
着替えを終えた
「どうしたの?」
「あの、これ……どうぞ…」
目を合わせないまま差し出されたのは、可愛らしいラッピングの施された大きめの箱。
「先日、頂いたマカロンの……お礼です。大したものでは、ありませんが…」
「えーっ! ありがとう!」
私は喜色満面と、その可愛らしい包装の箱を受け取った。
「でも、そんな気を遣わなくてもいいのに! 僕が好きでやったことなんだからさ」
「ですが、とても高価なお菓子のようでしたし……それに私、バレンタインもお渡ししてないので…」
「そんなの気にしないでよ。でも、ありがとう。嬉しいよ」
喜びをそのまま笑顔に変えて
どころか「それでは」と性急に身を翻し事務所を後にした。
彼女を見送った私は、淹れたての紅茶と一緒にテーブルの上へ箱を置いた。
よく見れば包装やリボンは100円ショップに置いてありそうなデザインだ。もしかすると、中身は手作りのお菓子か何かだろうか。
「あ、そうか。それで寝不足だったのか」
睡眠時間を削ってまで作ってくれたとは、どれだけ手の込んだお菓子なのだろう。
私は鼻歌交じりに箱を開けた――が。
「なんだ、コレ?」
その中身に、私は驚いた。
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