父親の血
友人はよく聞かされている話なのだが、俺の血統についてほんの少し触れておく。
本文「石川家の継承」は、血統について深く理解していただかないと全く意味の分からない内容なので、実は詳しく書いていく必要があるのだが、何故少しだけなのかはもう少し後でわかる。
俺の親父は幼少の頃に亡くなっており、記憶にあまりないというのが正直なところ。
どうやら母とは離婚していたらしいが、そんな話は全く興味が無い。
このお話の展開が訪れるのは、この「記憶に薄い父」の遺産を整理した後に起こる事件であり、前話も含め、プロローグ程度に読んでいただけたらと思う。
このお話の題に「石川家」とつづっているが、父親は「三波」である事を加えておく。
そう、それが詳しく書かない理由である。
俺は父親の事を「パパ」と称しているので、今後はそう記す。
パパが一体どんな人だったのかを知ったのは、30歳を超えてからだった。
そのもう少し前、母とパパの「共通の友達」と言う人が亡くなった際のお葬式でその片鱗は見えていたのだが、俺は見て見ぬふりをしていた。
俺には姉貴がいるのだが、その姉貴がある日変な言葉を俺に言った事が切欠で、俺が知る事になる。
「アンタのパパも、小指なかったしね」
頭の回転が悪い俺は一度「奇形だったのかな?」とか考えたが、普通ならすぐに気が付く内容のはずだった。
そう、パパはソッチのヒトだったのだ。
母親にも確認をしてみた。
「え? 言ってなかったっけ??」
フザケンナ。
ものすごく腹が立った。
父親の素性を今聞かされたからではない。
俺はヤクザや不良の類が大嫌いだからだ。
そりゃもう、この世から消えてなくなってほしい程嫌いだ。
そして葛藤がある。
嫌いな人のはずなのに、話せないことへの悔しさがある。
まぁ、もうどうする事もできないが。
パパは偉大なり、ってか?
30代半ば、パパの名前を見たのは弁護士さんからの手紙だった。
内容は相続資産の件だった。
とある一族のとある土地の権利が一部俺と姉貴にあり、売却ができず困っているとの事で、相続放棄をしてもらいたいとの事だった。
しかもこの土地、十数名が権利該当者であるというではないか。
何の事だかサッパリだったが、どうせ大した量でもないだろうと思い、手紙の内容通り「裁判の当日に出廷しない」ことで解決を図った。
それはそれで無事終了したのだが、その後すぐに起こった事態がもっと大きな出来事となった。
別件で、他県の市役所から手紙が来た。
「アンタの所有している土地に植えてある草木が伸び放題で近隣から苦情が来ているので何とかしろ」
という内容だった。
全く身に覚えがない・・・。
つまりはコレ「代襲相続」というもので、パパ方のおばあちゃんの所持していた資産が亡くなったパパを飛び越えて三波姉弟に振ってきたのだ。
これの相続放棄が面倒で面倒で・・・。
母親とパパの過去の記録や、俺とパパと祖母の関係性を証明したりと、手続きで天手古舞になった。
この時知ったのだが、パパは妾の子だったのだ。
過去に顔も名前も知らない弁護士から来た「土地の権利問題」は、パパの「本当のパパ」つまりパパ方の祖父の財産だった事がここでわかった。
三波家はその「本当の祖父」から受け継いだ名でなく、パパ方の祖母の「芸者の血筋」から受け継いだ名である事も分かった。
三波家は、幸せな血統で無い事が証明されてしまった事件だった。
しかも、その事実を明るみにしてしまったのは、まぎれもない純血の末裔である俺本人だった。
この事件の後、俺は表題である「石川家の継承」を知る事となる。
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