第2話 晴れと雨
天気は、昔の人ならば神様によって変えられる。または、恋する気持ちを例えるのにも使われていた。けれど、最近は、「雨が降ってて憂鬱」とかそんなふうに感情もを込めることは結構ある。あとは、あの子の笑顔とかにのせてみたり。
「ありがとうございました!」
とてもハキハキとまるでアイドルのような声が体育館に響き渡った。この日は、僕が通う高校の新入生に部活動を紹介する目的で作られた、部活動発表会の日だ。あの子はダンス部で、いつにも増して、輝いていた。まるで太陽のように。僕は、ただ輝くものを消さないように分厚い雲にならないように漂っている、気配しかない俗に言う「陰キャ男子」だ。
あの子、
僕は、そんなふうに明るい如月さんが初めて高校で出来た友達だった。でも、僕は怖かった。僕は、今までこんなふうに、暗い性格でオマケに誰とも喋らないがために色々勝手なことを言われ続けて、やってもないことや関係がないことで勝手に責められることもあった。だけど何故か、如月さんと話している時は気にせずにいられた。如月さんと色んな話をした。どんな部活に入部するか、授業どんなのをやるのか、文化祭は何をやるのかとか僕は入学してしばらくは、とても楽しかった。
高校生活にも慣れたある日、席替えを行うことになった。まぁもちろん、如月さんとは席は離れてしまったけど。それはしょうがないこと元々僕には、手の届かない人だから。でも、どこか如月さんが周りの同じ部活の人や友達に話している笑顔を見て、「あの笑顔が僕と話している時であればいいのに」とかいうおこがましいことを考えてしまうようになった。しかし、僕はこんな考えを持ってしまっては行けないと思っている中、生徒会の選挙が行われることになった。この学校の謎の文化で1クラス1人はなるべく立候補することっていう決まりがあった。僕は、目立ちたくはなかった。そんな中、如月さんが手を挙げた。
「先生!あたし、雨宮雫月くんがいいと思います。」
「じゃあ推薦する理由を聞いてもいいかな?」と先生が言った。
「雫月くんは、勉強も出来るし、話していると以外と面白い人だし、結構な男子がサボってる掃除も人1倍真面目にやってくれてるし、なんて言うか縁の下の力持ちみたいな感じだから、推薦しました。」と言いきって、僕の方を満面の笑みで見つめた。そして、先生が僕に「どうする?」と言う視線を送ってきたので僕は、腹を括った。もちろん回答は、「やらせて頂きます。」と答えた。
それからは、順調だった。僕が立候補し、推薦した第1人者の如月さんが応援演説をしてくれたので、僕の演説を聞いてなかった人も、如月さんのあのアイドルみたいに可愛い表情や太陽のように明るい声など人前に立つには充分すぎる人が演説をしたのだ。聞かない人などいるはずがない。その結果、如月さんのおかけで僕は、生徒会になることが出来た。
発表の日の帰り、僕は如月さんにお礼をしようと思って、如月さんが好きだと言っていた、いちごオレを片手に、教室に向かった。でも、僕は教室に入ることは出来なかった。ましてや、その場から逃げたかった。だって、如月さんは告白されていたのだから。
「日向、好きです。俺の彼女になって欲しい。日向と話していると楽しいし、何より日向がダンスしているあの姿で俺はもう日向以外考えられなくなった。だから、」
「ごめんね、あたし、好きな人いるの。その人はね、真面目で誠実で気遣いもできるし、それこそ、話していると楽しいの。その人はね、話しているとキラキラしてるんだよ。だから、ごめんね、皐月くんの彼女にはなれない。」
早くここから立ち去りたいでも僕はここから立ち去ることが出来なかった。皐月くんというのは同じ学年でとてもイケメン。例えるなら、男子版の如月さんみたいな人だ。それに、如月さんの好きな人は、もしかすると、僕なのでは、ドキドキしていた自分が恥ずかしくなってきた。僕が話していてキラキラしている訳が無い。だから、如月さんの好きな人は、僕でも、恐らく、イケメンな皐月くんではない誰かなんだろうな。僕は、如月さんに気づかれないようそっと教室の後ろの棚に、演説ありがとう。と書いた紙をひいてその上にいちごオレを置いて僕は帰ってしまった。
それから1年弱が経った。
僕は生徒会として、部活動発表会の運営を担当している。運営の担当は、もう1人いる。そう、何の因果か皐月くんだった。僕は告白しているところを知らないフリをし続けている。
僕は、進行をするために、
「次はダンス部の発表です。ダンス部の皆さんお願いします。」と言った。
「皆さん!こんにちは!ダンス部です!私たちダンス部は、女子が9割方を占めていますが、男女問わず大歓迎です!これからお見せ致します、ダンス部の発表のテーマは月夜と夜明けです。それではどうぞ!」
と、ダンス部の部長が説明した。すると、暗転したステージの真ん中にスポットライトが当たり如月さんが、センターで堂々と笑顔でダンスを踊っていた。やがて暗転は段々と明るくなりアップテンポになった。その時隣で、皐月くんが、「やっぱりいいわ。日向。最高、好きだわ。」と、言い始めた。僕は恐る恐る、聞いてみた。
「皐月くんは、如月さんと付き合っているの?」
「あーうんそうだよ。俺がずっと告白し続けて日向が根負けして俺の彼女になったんだ。元々中学一緒でそれなりに仲が良かったから、高校で新しい環境に慣れたら告白しようって決めてたんだ。」
「それはすごいね。ぼくには出来ないや。ごめんちょっと席外すね。」
僕は、泣きそうになった。聞かなければいい話だがやはり気になってしまう。僕は、体育館から出て窓辺に寄っかかって外の雨が降り出しそうな、空を見て、ため息を1つつき、体育館に戻った。ダンス部の発表は、1番の見せ場だった。そう、如月さんのソロだった。僕は、太陽と雲の距離をどうやら間違えて覚えていたんだな。僕は、歓声の中で1人俯いた。
「ありがとうございました!」
如月さんの笑顔な姿が、滲んで見えなくなってしまっていたのは、誰にも気づかれていないだろう。
天気は、神様によって決まっているならば、神様は本当に存在して、僕の感情を読み取って、雨を振らせようとする雲を選んだのかもしれない。昔の人が、雨は憂鬱な気持ちと、考えたのも、事実で、雨のような土砂降りの涙を流したのかもしれないと僕は思う。
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