異能脳髄摘出始末 5
「……『
手元の極秘書類を見ながら所長が尋ねると、秘所は素直に
「ええ、
「謝るには及ばないよ。こちらも
「
秘書の言葉に、所長は少し意外そうな顔をした。
「……『異能器官』なんて言葉を知っているのか? 異動前の部署は、そういったことには詳しくないと思っていたが」
「
秘書は特に不快そうな様子もなく、淡々と応じた。
「あれ? そうだったかな?」
所長は首を
「まあいい。じゃあこれも知っているかもしれないが、異能器官は形成されるプロセスが未解明でね。遺伝的な
「その櫛谷という女性にもそうした変異が起こった」
秘書の言葉を、所長は肯定する。
「ああ。
しかし、所長はそこで眉を
「だが、異能を持った櫛谷の器官は脳の一部だった。デリケートな器官を完全な状態で手に入れるために、確実に
所長は
「そこで長期間にわたる
そう言って、所長は
●●●
日向は一つ二つ質問をした他は、静かに耳を傾けていた。
撫子の隣では巧が、こちらは話を聞いているのかいないのか、念入りに棒を
「なるほど……、器官を提供した場合、
日向はそう言って、改めて撫子に視線を向ける。
「ですが、あなたは兵器と成り得る器官を提供したくない。
日向の問いに、撫子は頷く。
「はい。変異した器官を廃棄してしまえば、例えその後私を捕らえたとしても、器官の異能は再現できないと聞きました」
「あちらもあなたに関するデータは大量にとっているでしょうけどね。とはいえ、現在の技術ではそこから異能を再現することはできません。元となる器官そのものがなければ。ですからあなたの脳髄の一部を取り出して廃棄してしまえば、異能器官の製品化は防げるでしょう」
「なら、どうか――」
そう言って、
だが、日向は首を横に振った。
「ですが残念です。そういった理由でしたら、恐らく我々はあなたの力になれないでしょう」
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