ジンパパ感想20-3-16 I.D.E.A

20-3-16 I.D.E.A

https://ncode.syosetu.com/n9347in/17/

の感想を書かせていただきました。

#ジンパパ感想

#ジンパパ感想20

#書き出し祭り

#書き出し祭り20


 遅くなってごめんなさい。

 「色」を効果的に使った作品だなぁという序盤の印象と、日常に潜む違和感を少しずつ積み上げていく感じが相まって、ゴシック・ホラー感が良い味出してます。

 そして、読者の不安が最高潮に達したところで事件が起こります。そこからの展開がまた良い。異形のモノとの邂逅、からの駆逐、からのこの不可思議な現象と主人公の接点。タイトル回収。畳み掛けて押し寄せる波にざぶざぶと洗われる感じが爽快ですらあります。

 会場四位とこの作品が跳ねたのも、恐らくこの緩急の魅せ方の上手さ故かなと感じました。

 ところで。ここで、ソクラテスのイデア論を少し振り返っておこうと思います。作中でも謎の男(ホーク1)が

「世界にはイデアという不変の真実が存在し、私達が認識する現実はその影に過ぎないという考え方です」

 と言ってます。

 イデアとは究極の理想のこと。プラトンは、真に実在するものはイデアであり、現実世界のものは、あくまでそれら真の実在の仮の姿(影のようなもの)でしかないと考えました。そして、全てのイデアは善のイデアに集約されると考えました。善のイデアはイデア界の中で最高位に位置します。

 wikipediaやその他、イデア論について解説しているサイトの情報を私なりに要約するとこんな感じ。

 「善のイデア」なる究極の真の実在が現実世界に染み出してきた結果としての化け物? ちょっと違和感ありますね。と言うことは、ソクラテスのイデア論に倣って、そう呼びはしている物の、現実世界の外側にある物は、どうももっと禍々しい物のように思われます。

 「悪のイデア」と言うには混沌としていて、それも違う。混沌、無秩序。「エントロピーのイデア」。そんな感じでしょうか。

 だとすると、世界が(エントロピーの)イデアに侵蝕されつつあるように見えて、実はその逆で、世界が(エントロピーの)イデアを侵蝕しつつあるのかもしれません。(エントロピー増大の法則が適用されるなら、ですが)

 因みに楽園機関”ミラビリス”。ミラビリスはラテン語で「不思議な」「素晴らしい」という意味。こちらもキチンと意味を持たせてネーミングされてる事が伺えます(ラテン語とは恐れ入りました)。

 タイトルの『I.D.E.A』も意味深ですね。「.」で区切られていなかったら「アイデア」と読んでしまっていた事でしょう。同時に、「.」で区切られることで、この言葉が(イデアを表すと同時に)何かのイニシャルによる略語である事も示唆しています。それが明かされるのは恐らく終盤。きっと何某かの意味が持たせてあるのだと思います。

 細部まで練られていて、それでいて繊細な序盤とスピード感ある物語の展開。面白かったし、何より読者の心を手のひらで転がす技工の冴を感じさせてくれました。

 面白かったです。読ませていただき、感想依頼くださって、ありがとうございました。

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