ジンパパ感想20-1-03 恋愛小説の当て馬騎士にさせられた

20-1-03 恋愛小説の当て馬騎士にさせられた

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の感想を書かせていただきました。

#ジンパパ感想

#ジンパパ感想20

#書き出し祭り

#書き出し祭り20


 本の中に入り込むお話として私が最初に思いつくのは、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』。他にも沢山あると思いますが、それらに共通しているのは、主人公がいったんその本を読者として読んだ後で物語世界に入り込むというもの。本の中に入ってしまう理由は、本自体が特別な力を秘めていたり、物語中の登場人物が外の世界を認識できるほどの能力者だったり、など様々。

 しかし本作は、彼女の蔵書に、それを読んだことのない主人公が入り込むという点で異色作。しかも、その原因が猫又のクロちゃん。

 このクロちゃんが、かなりの曲者。


 突然、家の中で失踪した彼女について、彼女の希望どおりの登場人物にしつつ、彼女が好きな本(『……(絶)倫王子……ツンデレ令嬢……』www)の中の世界へと転移させたと語りだします。その理由は、

「家に来た時から下心満々のおぬしの近くにアキを置いておけぬでな。アキを安全な場所に逃がしたのじゃ」

 などと言いながら、もし彼女が本の中でヒロインになっているのなら、結婚式の後、王子と結ばれ初夜を迎えることになると言っています。では、主人公よりも、本の中の登場人物と結ばれることを望んでいるのかというと、そうでもなく。

「まぁ、がんばれよ、お前のこと嫌いじゃないからの」

 と主人公に語り、そして、彼女をちゃんと見つけたら連れ戻せるようにするとも言っています。(そうしたら、結局、主人公の下心が完遂することになる)


 表面的に捉えたら、えらい矛盾の塊です。

 つまり、クロちゃんの目的は他にある。しかも、彼女を本の世界に送り出し、


「お前アキのことが心配じゃないのか?」


 と主人公を炊きつけていることから、本の中へは、彼女だけでなく、主人公も送りたい模様。真の目的は、なんなんでしょうね。


「家に来た時から下心満々のおぬしの近くにアキを置いておけぬでな」


 これが偽りの理由であるのなら、主人公をからかっていることになります。


「四つん這いになって三遍回ってにゃんと……」


 と合わせ、間違いなく主人公をからかっています。

 だから、彼女と主人公を本の世界へと送り出す、その目的は世界を救うためみたいな壮大な話ではないし、弱って雨に濡れていたところを救ってくれた飼い主やその彼氏である主人公を害する気は毛頭なさそう。


 そして、もう一つのヒント。クロちゃんは彼女を本の世界へ送り出した理由を他にも語っています。


「アキはこれを何度も読みかえしておった。この本に入ってみたいと言っていたのでな」

「願いをかなえてやった」


 どうも、これが真の理由っぽい。そして、そこに主人公も送り込み、何かをさせたい。何かをさせたいにも関わらず、


「まぁお前にはアキが誰になったか教えんがな」


 と、難易度をあげてくる。


「おい、おまえ、アキはまさヒロインじゃ……」

「それは教えん。だがヒロインだったら婚約者の王子に……」


 ここも思わせぶり。明らかに彼女はヒロイン以外の登場人物になっている。ここは、もう少し読者にミスディレクションを誘う方が良い気もしますが、明らかにヒロインじゃない登場人物になっていることが伺えます。


 ……となると。

 ここからは、私の妄想炸裂モードですが。


 高校時代は女性としては背が高くスレンダーで男の子より女の子にもてるタイプだった彼女。髪は短く切りお化粧もほとんどしない。


 って辺りにもヒントが忍ばせてあるようで。

 クロちゃんは、命を救ってくれた恩返しに、彼女の密かな願望を叶えてあげようとしているのではないか。なんだかそんな気がします。その願望とは……


 ずばり、アキちゃんは、絶倫王子でしょう。そして、主人公は、当て馬の「女」騎士として、絶倫王子に✕✕✕される。


 これが、アキちゃんの真の望みとあらば、もてる能力を動員して、叶えてあげるのが我の務め。そんな感じなんじゃないでしょうか。

 ……なんて想像を膨らませつつ読ませていただきました。面白かったです。読ませていただき、感想依頼くださって、ありがとうございました。

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