ジンパパ感想20-3-25 あなたにこの子はわたしません!
20-3-25 あなたにこの子はわたしません!
https://ncode.syosetu.com/n9347in/26/
の感想を書かせていただきました。
#ジンパパ感想
#ジンパパ感想20
#書き出し祭り
#書き出し祭り20
十五歳なのに、育った環境か、彼女自身の性格か、純真無垢(すぎる)ヒロイン。彼女の狭い世界から覗く大人の社会は、まさに異世界。彼女の中でも、何が大切なことなのか、何が些細なことなのか、彼女なりの価値観が熟成されつつあるものの、社会通念上のそれとは大きな隔たりがあり、そのズレがこの作品の大きな売りになっています。ヒロインの独特の価値観を通して世界を覗く面白さと、そんな彼女に振り回される大人たち。
アンジャッシュのコントのような、というと作者様には失礼でしょうか(ごめんなさい)。スキャンダル以降、彼らのコントを見る機会は失われてしまったけれど、彼らの繰り出す「認知のズレ」から生まれる笑いが私は大好きでした。
それにしても、このヒロイン。微笑ましくも激しく「ぽんこつ」(笑)。だからこそ愛されるヒロインたり得るのだと思います。そして、そんなキャラクターを生み出し、生き生きと活写された点において、めちゃくちゃ評価に値すると感じています。作者さまや他の物書きの皆さんの場合はどうなのか分からないのですが、私の場合、これがなかなか難しい。たとえ性格設定をこうと決めたとしても、このキャラクターならどう考えるかとか、どう捉えるかとか、どう振舞うかとか、そういうのが苦手で、容姿や性別や置かれた状況が違っていても、登場キャラクターが「これ、ぜんぶ俺じゃん」って感じの言動しかしてくれないのです……。(感想じゃなくて、愚痴ですね。ごめんなさい)
話を戻して。特にヒロインが住む牧歌的な世界観(=彼女の小さな世界のすべて)を「牛」にフォーカスして描き出し、彼女の目を通して語られているのが、分かりやすく、面白いですね。
なんてこと……これでは、牛乳が、足りない!
この「心をとらえる一文」に作品の色がよく出ていて素敵です。
また、外の世界の有り様を「本」を通してしか知らないとした点が、また上手いです。「男女が一夜を共にすると子どもができる」という半端な知識が、これから起きる騒動の発端になっている(しかも、読者にはそんな過ちは起きていないと理解できる)ってのが実に上手いです。
「本が大好きな夢見る少女」という体験を持ったことがない(持っていたら恐い)、不惑どころか知命も過ぎたおっさんの私でさえも、彼女と一緒にふわふわとした世界から、恐る恐る世界を覗く体験をさせてもらえるところがまた本当によく出来ています。
彼女にとって、一夜の過ち(勘違い)は、
かねてからの夢だった金髪碧眼の王子様のお迎えもないだろう
ことが、一番の悩みであり、『クラリスと恋の花束』の四巻を早く読みたいという焦燥と、まるで等価なものとして描かれているラストも良いですね。何が大切なことなのか、何が些細なことなのか、それが悉くズレている。
そんな魅力的なキャラクターを軸に描かれている本作ですが、技巧面においても、きっかけとなる出来事(=デビュタント)をはじめ、設定、バックストーリー、舞台背景といった情報がバランスよく開示されていて素晴らしいです(ファースト10的に)。読者が十分に状況を理解した上で、これから巻き起こるであろうドタバタへの興味を駆り立てる、そんな素敵な書き出しだと思います。
完成度が高いが故に、一つだけ気になったのが、黒髪の男性知人のくだり。男性知人(=オーバン)よりも先に「メリー」という名前が出てくる点、メリーとアメリーの名前が似ている点、メリーは(恐らく)牛の名前という点。そこがちょっと読み解き難かったです。
「そもそもだが、アメリーには黒髪の男性知人はオーバンしかいない。しかし、一歳九カ月の牛の……」
ぐらい平易な文の方が、作品の雰囲気にも合っていたかな、と思いました。
でも、そんな些末な個人的な指摘は無視しちゃってくださって構いません。本当に、面白かったです。読ませていただき、感想依頼くださって、ありがとうございました。
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