ジンパパ感想15-1-3 AIにも愛を持てますか
15-1-3 AIにも愛を持てますか
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大技と小技が絶妙に絡みあう、素敵な書き出しでした。
人工知能によって高度な知能を得たアンドロイドが愛を理解し、人を愛する物語。このテーマ、みんな好きですよね? 私も大好物です。類似のテーマで作品を書いたこともあります。(この作品には及びませんが、)そのぐらい好物です。
果たして、人工知能は愛を理解できるのか? 理解できたとして、人を愛することができるのか? そもそも。愛ってなんなんだ? 愛という人類普遍のテーマにも通じる、AIの愛の物語。深いテーマです。これが大技。
この作品におけるAI「コガネ」。電脳空間におけるアバター時点の容姿は、
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揺れる黒髪、絶えず綺麗な金眼、可愛らしい赤の和装。動くたびに凛と鳴る髪飾りの鈴の音が特徴的です。
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なんと。和装、黒髪! そして、一人称「
これは盲点。スチームパンクならぬ……和風SF? 気の利いたジャンル名は思いつかないですが、めっちゃ良いと思います。このアイデア、いつか拝借しようかなぁ(てへ)。
そして、
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電脳空間での姿を模して作られた特別製。
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今の装いは茜色の巫女服。黒髪と金眼は変わらずですが、漆の簪で留められたお団子ヘアーが特徴的です。足袋と草履まで揃っています
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いい……(←魂が震えてる音)。
これが小技。
コマンドプロンプトの演出も素晴らしい。
そして主人公は、10歳の誕生日のお祝いとして、アンドロイドの体を得ます。本文中での言及はありませんでしたが、あらすじには「生体アンドロイド」とありましたので、鋼鉄の骨格やネジや歯車ってわけではなく、セラミックの骨格に人工筋肉をまとったような、生体パーツで構成されているのかなと想像(通常の食事からエネルギーを得られるのもそのおかげかな?)。
そのため一見、人間と区別がつき難いのでしょうね。だからこそ、「戸籍がない」ことが問題視されたり、「脱社会者」認定されてしまったのでしょう。
ということは、コガネが手に入れた生体アンドロイドの体は、一般に普及してはいないのでしょう。「妻」とまで呼んではばからないマスターの執着と愛が生んだ唯一無二の存在なのでしょうね。
一連の話を「回想」として締めくくっているのも小技が効いてて良いなと思いました。そして、全体として悲劇の衣をまとった作品ですが、そこに一条の光。
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"心"を得ることができた事だけは、世界に感謝しなければなりませんね。
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いわゆるメリバエンドなのでしょう。ですが、注目すべき結末を明確に示して、読者をそこへと誘うこと。その目的を明確にした最後の大技が効いていて、それがこの作品の読後感を印象的にしているんだと思います。
面白かったです。
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