ジンパパ感想15-1-5 無題

15-1-5 無題

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 作者からの挑戦状。そんな雰囲気をタイトルやあらすじから、ひしひしと感じつつ。こちらも読者として真剣勝負で受けてたちたいと思います! なにしろ、作者としてはアマチュアですが、読者としては五十年近いキャリアがあるわけですから! (爆)


 やはり。私の諸感はこの一言でした。タイトルやあらすじは挑戦的で、ひたすら煽りたてるような雰囲気を醸し出していますが、その癖、綺麗に着地してみせるような、そんな作品だろうと踏んでいたんです。果たしてその通り。なるほど、劇中劇のタイトルが『無題』。そして、そんなタイトルに対し、登場人物に


「すごいタイトルですよね。地区大会から話題で、ずっと気になってたんですが、まさか全国制覇するとは」


と語らせる。うーん、上手い。そして、その劇中劇の内容がどんなものかと読み進めると……


――――――――――

 それは"西暦二〇〇〇年"に恋した少女の物語。


 異性ではなく、人ではなく、生き物ではなく、物体ではなく、時間という概念に、"一年間"に、恋をしてしまった少女。

――――――――――


 せっかくタイトルの謎が解けてほっと一息つけると思いきや、すぐに次なる謎が提示されます。なんですか、作者さんは私をどこまで翻弄するんですか。嫌いじゃない、嫌いじゃないです。というか、こういうの好きです。


 そして、読者を翻弄しつつ、物語はさらなる問題提起を。いや、二重、三重の問題提起を重ねていきます。


 トランスジェンダー、LGBT、盗作疑惑。


……にとどまらない。

 劇中劇のタイトルは、実は『無題』ではなく、無題だった。

 演劇部顧問の椎名先生の改題に対する覚悟とその真相。


 なんでしょう、この痺れるような感覚。

 ジェットコースターのように、どんどんと物語にのめり込んでいく感覚。


 作者による劇薬の投与は終わらない。


 椎名先生が歌穂に会いたい理由。

 窪田先生が歌穂に会いたい理由。


 もう、お腹いっぱいです。

 これ以上は入りません。


 一泡どころか、飛んでもなく泡吹いて倒れそうです。

 西暦2000年と駆け落ちした女とそれを追いかける男女の物語と。

 それを執筆した作者様。


 これは、予想を遥かに上回る刺激に満ちた作品でした。

 そして酩酊感、堪能させていただきました。

 面白かったです。


 続きがなくとも完成度の高いショートショートといった雰囲気ですし、続きがあればまた、さらなるジェットコースター感が味わえそうな、

「どこまで行くの!」

 って感覚で読ませてくる作品だと思います。

 面白かったです。


 読ませていただき、感想依頼くださって、ありがとうございました。とても楽しく拝読いたしました。また、感想を書かせていただいたことで、自分の作品への振り返りの機会にもなりました。ありがとうございます。

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