ジンパパ感想15-1-15 君の世界を巡る旅

15-1-15 君の世界を巡る旅

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Option:どのようにでも


 はぁ……。思わずため息が漏れるくらい素敵な作品でした。雰囲気、世界観、キャラクターどれも極上の一品。

 始終張り詰めたような緊張感をまとった作品でした。

 まず、猛烈な寒波でホワイトアウトした街で、家を飛び出していった息子を探す追跡劇から幕をあけますが、それがこの緊張感の一因。正確な理由は伏せられていますが、妻が自殺したことに、残された家族は居た堪れない思いや、罪悪感を感じていて、これが緊張感を生んでいる二つ目の要因。そして、妻との死別をきっかけに会話が減り、ぎくしゃくとした父子関係。これが三つ目の緊張感の要因。

 冷え切ったその父子関係性と吹雪の世界のベストマッチング。心象風景と実際の風景が重なり、相乗効果で緊張感を生む演出に、上手いと唸らされる珠玉の冒頭シーンです。


―――――

「言いたいことがあるなら、言ってくれれば良かったのに」

―――――


 亡き妻に対して主人公が発したこの心無い一言に深く傷つき、激高した息子くん。亡くなった母親の愛情をしっかりと受け止めて育った、根の優しい子なんじゃないかなって思えます。


 そして、場転。

 登場するのは、見た目は子ども! 中身は大人! な魔女リディアと巨大オオカミのスキア。


―――――

「そうとも。私はリディア。紛うことなき魔女だ。お前、名は?」

―――――


 こういう(「紛うことなき魔女だ。」)語り口調の魔女さん、大好きです。大好物です。

 だけど、


―――――

 組んだ足がスカートを捲り上げ、美しい太ももがチラリと見えた。

 佑はゴクリと唾を飲み込んで、狼のスキアとリディアを交互に見た。

―――――


 タスク父ちゃん。これは、あかんw

 実年齢はともかく、リディアは「10代半ば」に見える容姿。息子くんも「15になったばかり」。息子と同い年くらいの女の子の太ももを見て「ゴクリ」はあかんやろw

 ここは正しくは、一瞬見えた美しい太ももの映像を網膜に焼き付けつつ、そっと目を閉じて脳内だけで楽しむ、ですよ。これが、大人の男っちゅうもんです。(あぁ、リディアさん、私にスキアをけしかけないで!)


 冗談はさておき、


―――――

家の鍵、財布、スマホ。元の世界に息子と一緒に戻れるのだとしたら、何一つ、失くせない。

―――――


 なんてあたりに、タスク父ちゃんの憎めない人間味みたいなのがよく出てると思います。


 全体にぴりぴりとした緊張感、そこに後半は新たな展開を思わせる出会いといった感じの書き出しで、とても面白かったです。


 いつか、息子くんと主人公は和解するのかな。

 して欲しいな。

 私も、まだ未就学児の頃の息子に、「また来てね」と見送られたことがあります。深夜とはいえ、毎日ちゃんと帰宅してたのになぁ。あれは悲しかったなぁ。


 最初にも言いましたが、雰囲気、世界観、キャラクターどれも極上な作品でした。

 「Option:どのようにでも」とのことなので、敢えて(ほんと、敢えてです)一つだけ書くとしたら、ラストの惹きの弱さでしょうか。四千字かつかつではなさそうですし、あと一文、二文最後に挟んで読者をさらに惹きつけることは出来そうです。(感覚で言ってました。結構四千字カツカツでしたね。ゴメンナサイ)

 なにか、ぐっと次の展開に繋がる惹きを最後に置けば、完璧だったんじゃないかなって思います。


 感想依頼、ありがとうございました。

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