ジンパパ感想15-1-11 どういうつもりですか? ~転生した悲劇の王妃ですが、前世の夫に求婚されています~

15-1-11 どういうつもりですか? ~転生した悲劇の王妃ですが、前世の夫に求婚されています~

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Option:忌憚ない感想


 忌憚ない感想ですね。承りました。早速いってみましょう。


 まずいきなりの「美丈夫」。こういう言葉選びのセンスひとつでピンときちゃいますね。「あ、この作者さん、出来る人だ」ってなっちゃいました。


―――――

 日に焼けた精悍な顔を彩り、豊かに波打って広い肩に流れる髪は、炎のような赤。彼の国土を見据える翡翠色の目は鋭く力強く、唇に浮かべた微笑は余裕と自信と王の風格に満ちている。

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 これ文章で数えて僅か五文目ですよ。ここまで読んだだけで、白旗振りながら、作品に特攻する覚悟が決まった自分がいます。どうやら、作者さまは、指先一つで私を殺しにかかっているようです。

 流れるような文章に酔いながら読み進めると、エルフリーデ妃を客観的に説明する地の文と思われたところに、急に差し込まれる一人称。


―――――

──鏡を見るたびに嘆いたものだ。

(え? 私──)

―――――


 上手い。上手すぎる。さり気なく差し込まれてるけれど、前世の記憶に触れた瞬間として、これほど効果的な表現方法が他にあるものでしょうか。ため息がもれそうになります。

 溢れる前世の記憶に飲まれて失神し、そこから目覚めたアンナリーザに付された傍点。エルフリーデ妃としての前世の記憶をもった、それまでとは違うなのだということが良くわかる、さりげない仕掛け。

 こうしたテクニックが随所に散りばめられていて、それらがどれもさりげなく可読性を高めていて、惚れ惚れします。


 物語としても、設定がめちゃくちゃ面白いし、これからどんなドラマが待ち受けるのかと期待してしまいます。エルフリーデ妃を暗殺した十八年前の陰謀も気になりますし、その時の息子も生きているなら、アンナリーゼと釣り合う年頃の青年として登場するはず。仕掛けられた舞台装置が今か今かと動き出そうとしている、そんな感じがひしひしと伝わってきて、続きが読みたいという気持ちが高まってきます。


 ただし。それだけの高いポテンシャルをもった作品なので、続きが気になりますし、実際、続きがあれば読むと思います。

――いったん、ひと息ついたあとで。

 これだけ完成度の高い作品だからこその贅沢な欲求ではあるのですが、息つく間も与えず、次ページボタンを押したくなるような、そんな惹きがあると尚よかったな、って思います。


 忌憚なくとのことでしたので、蛇足かなと思いつつも一言書き添えてしまいました。しかし、どこからどうみても、完敗だと白旗振ってた筈のやつが未練たらしく負け犬よろしくキャンキャン鳴いてるだけですので、あまりお気になさらずに。

 本当に面白かったです。感想依頼、ありがとうございました。

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