第199話 巨大歯車ロボ!?
三人娘を護衛艦フワデラに収容してから一週間。草壁医官より、三人が身心ともに完全に回復したとの報告を受けた。
回復どころか、三人娘は完全に艦内での生活になじんでおり、既に乗組員たち全員から可愛がられている状況となっている。
「そろそろ皆さんをお家に送り届けようと思うのだが……」
士官室で、私は草壁医官と桜井船務長を交えて、三人娘をどう送り届けようかと相談をしていた。
「これまでに得た情報から金星都市カンドリカンは、この辺りになると思われます」
桜井船務長が、衛星写真を広げながら説明する。
「ここまで内陸部に入ってると車両かヘリでの移動が必要になるか。なるべく人目に付くのは避けたいのだが」
「陸路を最短距離で進めるように、艦をここまで北上させるというのはどうでしょうか?」
そう言って桜井船務長が、衛星写真をトントンと指で叩く。
「分かった。それで草壁医官……」
私が改めて三人娘の健康状況を確認しようとしたとき、艦内に警報が流れた。
「謎の飛行体が出現! 総員警戒態勢!」
ステファンが私のインカムに連絡を入れて来た。
「謎の飛行体? ドラゴンか何かか?」
私と桜井船務長は、急ぎ
「いえ、ドラゴンではありません……って、えっ? 未希何だって? ロボ?」
どうやらインカムの向こうで田中未希航海長がステファンに何かを叫んでいるようだ。
「艦長! 巨大ロボ! 巨大ロボが出現しました!」
ステファンの叫び声を聞いた私は、一瞬その場で立ち止まってしまった。
「巨大ロボ? 以前、現れた銀の巨人か?」
「い、いえ、あの巨人とは違います。全然違います、これは……まるで……」
突然、背中から誰かが私を抱き上げて、そのまま
トルネラだった。
彼女は艦内を恐ろしいスピードで進み、アッと言う間に私を
ヴィルミカーラの首に手を回して身体を安定させた後、船外モニタに目を向けた私が見たのは……。
巨大な……
巨大な巨大歯車ロボだった。
「然り。我は女神トリージアの第三位階の御使い、大天使ツォルゼルキンである。勇者らの船に福音を授けるものなり」
大天使?
護衛艦フワデラの目の前に現れた巨大歯車ロボは、自分のことをそう名乗っている。
だがその全身は、大小さまざまな無数の歯車で構成されている。それぞれの歯車は、色々なスピードで回転を続けていた。
どうみても、大天使というより悪の組織によって作られた巨大ロボにしか見えない。
「田中! アイツの位置をレーダーで捉えられているか?」
「はいっ! ばっちり捉えています!」
となると、霊体とかホログラムとかの類ではないのだろう。
だがそれにしては巨大過ぎる。護衛艦フワデラよりも大きいかもしれない。
そんな巨大な歯車で構成されたロボが、どうやって空中に浮かんでいるというのだろう。
大天使と名乗るツォルゼルキンは、その背に巨大な羽を持っていいる。だが無数の歯車で構成されている羽は、一切羽ばたいていない。
まさか、魔力の原理で浮いているのか? 魔力でファンタジーな浮力が発生しているとでも言うのだろうか。
ならフワデラも、魔力で浮かせて空中護衛艦にクラスチェンジできる可能性もあるのか?
いや待て、そんなことは今考えることじゃない!
「桜井船務長、シースパローをいつでも発射できるように準備しておいてくれ」
「了!」
桜井船務長がそう返答したとき、
「然り。我は汝らに敵対するものにあらず。汝らに福音を授るものなり」
まるで我々の行動を見透かしているかのようなタイミングで、巨大歯車ロボが言った。
そのときになって、ようやく私はこの巨大な存在が妖異である可能性に思い至る。
うかつだった。
見た目が怪獣ではなく、ロボっぽいので、これは妖異ではないと勝手に思い込んでしまっていたようだ。
妖異であれば、乗組員たちに対する精神攻撃が非常に危険だ。
「妖異戦だ!」
「対妖異戦闘準備!」
私の言葉を聞いた、ステファンが直ちに復唱する。
妖異となれば、頼りとなるのはフワーデだ。
「フワーデ! どこにいる!」
私が叫ぶと、目の前にホログラム・フワーデが浮かび上がった。
「はーい! ここにいるよー! 遅れてごめんね! ちょっと集中してたの!」
集中? どうせ動画編集とかしてたんだろ!
とツッコミたいところをグッと堪えて、私はフワーデに巨大ロボについての情報を求める。
「フワーデ、あの巨大な歯車について何か分かるか?」
「んーっ、歯車? って、何言ってるのタカツ。あれは天使だよ?」
「あれが天使!? 妖異じゃないのか?」
「妖異ではないよね」
「やはり悪の組織の巨大ロボか!」
「違うよ! ゴイス酷いよ、タカツ! あの人はね、ワタシのチャンネルの
「
私はフワーデの言ってる意味が理解できなかったので、とりあえずそのまま繰り返してみた。
「うん。
船外モニタを見れば、護衛艦フワデラの前に浮かぶ巨大な歯車ロボ。
それを自分のチャンネルの
私を含めCICにいる全員が、この状況を一切理解できずに固まっていた。
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